その後、Yは後輩警察官のXとともに、市内のパトロールに出掛けた。まだYが受け持っているサイバー犯罪が解決したわけではない。今、全力で捜査に乗り出している最中だ。
パトカーに乗って、Xが運転し、助手席にYが乗る形で。
→Reflection Shot→バックミラーの乗り込もうとする二人の姿と、ルームミラーのXの目元
Y:「社会公共の安全・秩序に対する障害を除去するため、国家権力をもって国民に命令し、強制する作用。また、その行政機関と位置づけられている」
X:「警察が、ですよね?」
Y:「ああ。警察法所定の普通にいう警察は、国民の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防・鎮圧・捜査、被疑者の逮捕、公安の維持を任務とし、行政警察作用のほか司法警察作用をも所掌する。旧制では中央集権的な官僚組織であったが、1947年の警察法により国家地方警察・自治体警察の二系統に分かち、公安委員会制を採り、地方分権的・民主的に改めた」
X:「そうなんですね」
Y:「54年警察法改正により、自治体警察を廃し、国家警察と都道府県警察との組織に改めたが、中央集権的な色彩が濃い」
そんな話をパトロールの最中にしながら、任務に当たる。犯罪の匂いを嗅ぎ分け、どこに街の死角があるかを見抜く。
X:「まだサイバー犯罪の全容はつかめてないんですか?」
Y:「ある程度は分かってきている。ただサイバー犯罪は外からは見えにくい。確たる証拠を積み上げねばならない。被害者の著作物に対する著作権にしても、既読者がこぞって侵害していたら、被害者はまたパクられるんじゃないかとSNSでの発表を滞らせるリスクもある。その点をやりたい放題の既読者は分かっているのか?」
X:「被害届は受理されたんですか?仮に、そうでなかったら、警察も不親切という風評のリスクにさらされる。今、警察も不祥事で大変な時になおさら」

Y:「日本の大学の担当教官が無断で文書を送付してから、被害者は人生が狂ったと証言している。その後もそれが引き金となり、職場でパワハラを受け、転職を繰り返した。いわゆる、メールや文書の無断転送だ。これはとんでもない被害だ」

そんな話をしながら、パトロールで街の至る所に目を光らせる。

X:「警察官職務執行法があるじゃないですか。それで被疑者に職務質問をしてはいけないんですか?」
Y:「それもそうだな。それは犯罪の予防および制止、立入り、武器の使用など必要な手段を定める法律だ」
X:「麻薬探知犬じゃないですけど、サイバー犯罪の匂いを嗅ぎ分ける警察犬がほしいですね」
Y:「危険に晒され、万が一傷を負ったら、警察医が対応するか?」
そんな話をしては業務に集中するYとXがいた。早くサイバー犯罪の犯罪者を逮捕しないと、それは警察の業務怠慢だとも言われかねない。あまりに時間がかかりすぎているため、警察組織への信用も失墜している。世間的な風当たりが強まっている中で、Yは自尊心を賭けて、この事案と闘っていた。
X:「この街は比較的治安がいいと聞きますが、そんな犯罪を犯す凶悪犯もいるんですね、世の中」
Y:「情報化社会の功罪だ」
X:「そうした犯罪が横行した中では、それを発明した人間側にも責任がある。発展だけが正しいとも限らない」
そこに無線連絡が入った。別の場所で犯罪が発生したらしい。
→Sound Effect→無線の時のザラザラとした声
Y:「分かった。すぐに駆けつける」
そう言って、Yはパトカーのサイレンを鳴らし、Xにすぐに現場へ駆けつけるように指示を出した。
→Sound Effect→パトカーのサイレンの音