C:「ラストステップとして、発表のススメ。①~④をストーリー編として、マンガを描く時一番最初にすることは、描きたいことをまとめる作業なの。ステップを一つ一つ追いながら、その都度頭で考え、手をよく動かし、また時には取材で足もよく動かし、全身をアンテナにして、物語の形をじっくりと作っていくこと。ここまでの作業で作品の面白さがほとんど決まってしまう。⑤~⑩を作画編として、原稿用紙に向かってからの一連のステップは、マンガ制作のメイン作業。独特の道具や技法が使われているので、一見難攻不落の城のようにも感じるけど、作業の基本はいたってシンプル。それぞれのステップで基本のテクニックをマスターすればどんなマンガでも描けるようになる」
Z:「あなたの夢が叶ったら、私たちを南米のチリへ旅行に連れて行って」
そう言うと、Cはクスッと笑って見せ、Zは右手を挙げて応えていた。
E:「日本のアニメは世界でも高い評価を受けている。その名に恥じない作品を描け」
そう言って、父のEは娘のCに発破をかけた。
食卓のテーブルにはZが料理したステーキが並んでいる。アメリカならではの肉料理だ。
E:「現在のウクライナ情勢やパレスチナ情勢はどう見ているんだ?」
C:「そうだね。激戦の地と化しているウクライナや、世界の火薬庫となっている中東のガザ地区では今もなお戦闘が続いている。こうした火種は世界中に飛び火し、生物兵器や化学兵器を投入して、人間もろとも自然環境を吹き飛ばし、地球を痛めつけ、そのうちに核ミサイルまで導入する羽目に。ふと気づいた時には、人間は地球上には水、森林、資源が乏しいことに気づき、息苦しくなって宇宙船地球号は大海の中で沈没することになるかもしれない」
それを聞いたZはもう娘のCがここまで成長したかと思った。高校生ぐらいになってくると、成長の度合いを見極めるために、適度にこうした質問を投げかけてみるのもいいだろうとEもZも思っていた。それでもこれはあくまで大学生レベルの質問だったかもしれないが…。
C:「ねぇ、今度あのポップミュージシャンのコンサートがあるの。友達と行ってもいい?」
Z:「勉強をしたらね」
C:「お母さんは何でも勉強ありきで物事を考える。そういう押し付けはやめてくれない?」
E:「いいだろう。たまには友達と遊んで、そういう場所へ行き、気分転換を図るのも大事な高校生活のワンピースだ」
Z:「あなたは甘いわね。私だけがこの家庭で嫌われ者を買って出るわけ?」
そう言って、少し怒って見せるZの姿があった。普段から気にかけていることは何でも話す高校生のCだったが、思春期のCにとっては勉強以外にもやりたいことはいくらでもある。友達との交流も大切な高校生活の宝だ。Cはステーキを頬張った。
ナイフでステーキを切るEは口を酸っぱくして言う。
E:「漫画家としての夢は絶対に捨てちゃいかんぞ」
C:「分かってる。それは何度も聞いた」
Z:「くれぐれも日本のアニメの評価を下げないことね」
C:「私の一存で日本のアニメに悪影響が?」
Z:「ないとも限らないわよ」
そう冗談を言いつつ、家庭内の空気は円満で、この日もそこにぎすぎすした感情は見られなかった。