ここは山口県で、Yの近所に住む中学生のWは相撲に励んでいた。来る日も来る日も相撲の練習(稽古)に明け暮れ、将来は角界入りし、横綱になることが夢だった。しかし、毎日厳しい相撲の練習ばかりで、時に弱音を吐くこともある。そこをぐっと乗り越えてきて、一段とたくましいWの姿があった。

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今日も相撲部の親方ともいえる顧問監督の指導を請うていた。
顧問監督:「大相撲の最大の楽しみは、何と言っても見ごたえのある取組。体重100kgをはるかに超える力士は、稽古によって鍛え抜かれた肉体が唯一の武器。土俵と呼ばれる狭い円形の競技場で行われる相撲は、ほかのスポーツに比べて勝負時間が短く、一瞬たりとも気が抜けない」
そんなことを話しながら、部員たちの士気を高めようと、あの手この手を使っていた。まだ中学生だけに、この段階では脇道へ逸れることもある。相撲を諦め、別の道へ方向転換することもある。
顧問監督:「特に、はだかでぶつかり合う立ち合いは、相撲の醍醐味を味わえる時間だ。相撲のルールは『相手を土俵から出すか、相手の足の裏以外の一部を土俵につけたら勝ち』と比較的分かりやすく、老若男女誰もが楽しめるが、勝敗を左右するポイントは、いかにして相手のバランスを崩して技をかけるかであり、単なる力比べではない」
そんなことを話し終えると、Wはしっかりとそのことを心に刻み、この稽古場の壁に貼ってある貼り紙を見た。そこには、しっかりと「心技体」の文字がでかでかと掲げられてある。
W(V.O.):「力士は相撲独特の練習法により、『心』『技』『体』すべての要素を鍛えていて、勝敗はもちろん重要ですが、観客や相撲ファンを喜ばせる相撲内容が求められ、これらを兼ね備えた横綱や大関に出世することが力士の目標です。俺もそうならなくちゃなぁ」
そんなことを思いながら、「どすこい人生」をひた走るW。自然と経験値は上がってきていた。
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顧問監督:「本場所は、力士が日頃の稽古の成果を発揮する晴れの舞台だ。大相撲は本場所の成績によって番付(ランク)が決まる厳しい世界だが、そのなかでは相撲の取組以外にも、華やかな場所入りや土俵入り、弓取式といったセレモニーや太鼓なども楽しめる」
一段と気が引き締まる言葉を投げかける顧問監督。
顧問監督:「力士はどんなものを食べ、どんな一日を過ごしているのか。また、大相撲を支えている行司や呼出、床山を始め、年寄と呼ばれる親方衆らはどんなことをしているのか」
すると、部員㉕がWに問い尋ねながら、
部員㉕:「W。お前、昨日ちゃんこを何杯食べた?」
W:「はあ?5杯だよ」
部員㉕:「俺は6杯だ。俺の勝ちだな」
W:「じゃ、俺は今日は7杯」
そんなことを話し合いながら、負けず嫌いの一面も覗かせ、すくすくと成長しているWの姿があった。

・『ビジュアル大相撲図鑑』(汐文社/監修 服部祐兒)