そして、右足を骨折したKはTとともにその時を待った。
→回想シーン→大ケガを負った直後に医務室に運ばれたK。そして、そこに居合わせたTと顧問監督のD
D:「よし、決めた!次の公式戦の大会の個人総合と団体戦にはKの代わりにTで行く!」
T:「えっ!?俺ですか?!」
その言葉を受けて、Kは即座に「それはいい考えだ」と思った。ずっと兄Kの背中を追い続けてきて、成長著しいTを起用することで、起爆剤としての効果を発揮してもらいたいとKもDも考えていた。
K:「お前が選ばれたんだ。名誉なことだ。お前なら、もうすでに穴を埋められる存在になってる。大いに暴れてこい」
その言葉を受けて、しばし考え込むT。大いに思い悩む。
T(V.O.):「俺にアニキの代役が務まるのか?」
そうしたことがTの心の中を埋め尽くし、大きな重圧が両肩にのしかかり、そのプレッシャーと闘っていた。Tはその場では「分かりました」と答え、引き受けたものの、兄のKの代役はかなりの大きな重圧だった。
→CAPTION:大会当日
→CAPTION:公式戦A

体操競技の公式戦の個人総合と団体戦がいよいよ始まった。ここには練習でのつり輪で着地の時点で右足を骨折したKも応援に駆け付けている。代役を任された弟のTは緊張感で満たされていた。
→Sound Effect→心臓の鼓動音
まずは兄のKと同じで、弟のTも得意種目の「ゆか」。
T(V.O.):「『ゆか』。ロンダート、前方伸身宙返り、後転とび~後方抱え込み宙返り、後方伸身宙返り1回ひねり、ロシアン360°、立位から伸腕屈身力十字倒立、と絶え間なく演技が続く。前転とびのスピード感と宙返りの高さで目をひく実施を目指す。ひねり技にもつながる伸身系の技は質の高さを究めよう。 高さと張りのある後転とびと浮き上がるような宙返りでインパクトを与える。まずは1回!美しい姿勢でしっかりひねりきることを目標にしよう」
この種目ではTは高得点を叩き出し、トップに立った。
→CAPTION:公式戦B
次にTはあん馬の演技に入る。筋肉が隆起し、兄のKとともに何度も練習したきた種目だ。
しかし、ここでもTは心の中の邪念が振り払えない。
T(V.O.):「俺にアニキの代わりが務まるのか?」
それを脇から見ていたKは、
K:「T!思い切って行け!お前ならできる!」
D:「『あん馬』。横向き旋回、正面横移動、倒立下り。あん馬にのる前に美しい旋回を身に着ける。あん馬の命・旋回はよどみなくスムースに減点のない実施を目指す。高難度の技も多い移動技は基本の技の正確性を十分に上げてから難度上げに挑戦する。美しく雄大な倒立を見せつけて演技の印象をワンランクアップ」
ここで2位以下の選手に差を詰められるが、トップを保ったT。
→この大会の公式戦は公式戦AとBのアンサンブルで、それが交互に何度も往復するクロス・インタラクション