そして練習試合の日を迎えた。相手は強豪で、現在の自分の課題を浮き彫りにするには打ってつけの相手だった。
Bは試合前に顧問監督のXに聞いてみた。コーチング編で、
B:「試合は勝たなければ意味がないのですか?」
X:「練習で培った『目標に向かい日々努力する習慣』は選手生活が終わっても一生身についている。このことが非常に大切だと考える。ほとに『ルールを守る』、『あいさつができる』、『人を敬う』、『工夫する』など、バドミントンを通じて人間としての成長が期待できる。指導者は選手が試合に負けてもバドミントンを嫌いにさせず、次のステージに希望をもって送り出せるようにしてほしいと思います」
そう言って、XはBの背中を押しながら、コートへと送り出した。Bは決意に満ちた表情をしていて、闘志に溢れていた。
ゲームが進む。試合は均衡していた。互いがポイントを奪い合い、熱戦を繰り広げていた。Bが得点を奪えば、相手も奪い返す。
B(V.O.):「ゲーム間に効果的なアドバイスは?」
X(V.O.):「対戦相手の特徴(長所・短所)をはっきり示すことで、焦点を明確にし、選手の集中力を高めるアドバイスをする。アドバイスする選手の試合内容で特徴的なものを挙げて、次のゲームでプラスに作用するようアドバイスする。選手の心理に大きな起伏が起こらないよう、アドバイスの言葉を選んでアドバイスする」
X:「これらは指導者だけでなく、選手も内容を理解し、思考の習慣をつけることが試合に勝つ近道の一つ。また、選手は指導者から一方的なアドバイスを受けるだけでなく、選手からも現状分析や感覚を指導者に報告することが次の展開に生きてくる」
そう言って、コート脇に来たBに声をかけるX。試合中に冷静に分析できているXがいた。
B:「成功体験が少ない選手は強くなりますか?」
X:「固定観念を打ち破る。正しく評価する」
そして、またコートへと戻り、試合を続行した。均衡していて、この試合でBの現状での課題が洗いざらい出された。修正点、改善点が出てきた。それだけではない。自分の得意とする点や、長所も見つけ出した。
X(V.O.):「いい指導者の条件は何か?」
Xは試合中に心の中で思った。
X(V.O.):「①チーム方針と規則作り②目標と練習計画の作成、練習・トレーニングの狙いを理解する③技術指導ができる④ノックがうまくできる⑤障害発生の対処ができる⑥コミュニケーション能力」
そして、試合は僅差でBが負けた。この時、Bの脳裏には「引退」の二文字がチラついた。どこまで練習しても結果がついてこない。その呆然自失となる内容に困惑の色を浮かべた。
B(V.O.):「私はもうバドミントンを…。諦め…」
X:「B。いい内容だった。これで次の公式戦はイケる」
B:「えっ?」
それでも、これは練習試合で、この試合を通して、勝つための課題が浮き彫りになる、収穫のある内容だった。次は公式戦となる。それに向けて、いい練習試合を組んだといえた。

→Edit→Bはうなだれ、その場にへたり込むように腰を下ろした