その後、家に帰ったBは二階の自室で荷物を置き、着替えを持って、一階のバスルームで風呂に入ると、それからはダイニングで夕飯を摂った。母が作ってくれたオムライスを食べる。もうじきゴールデンウィークもやってくるし、母の日も近い。
B:「お母さん。今度、オムライスの作り方を教えてよ」
母:「あなたももう作れるでしょ?」
B:「いや、お母さんほど上手くない」
そう言うと、母はにこりと笑い、Bの正面の席に腰をおろすと、しっかりと娘のBと向き合った。Bは今言った言葉が母の日の布石でもあるし、最大限の母への感謝の言葉でもあった。
B:「お母さん、今私は就職活動をしているわけだけど、どこも上手くいかない。福井から都会に出て、働こうとも思ったけど、地元の福井に残ることも考えている」
母:「そう?あなたの人生だもの。あなたが自分で決めなさい」
B:「えっ?それだけ?他に何も言わないの?」
母:「人生は自分で決めるものよ。あなたが後先に一生後悔しないために、最後の決断は最後は自分。そのためのアドバイスはするけど、結婚や就職などの大事な決断は最後は自分で決めないと」
B:「そう?…ありがとう」
それを聞いて、Bは大いに悩んだ。福井で就職先を探すとなると、それなりに限られてくる。東京や大阪になれば、もっと選択肢は広がるはずだ。今年の就職戦線も中途が5割と聞き、売り手市場とはいえ、新卒はそれなりに厳しいとも聞く。私にはバドミントンがあると自信を持ってきたが、今はそのバドミントンも不調の一途を辿り、就職戦線に生き残るという自信も揺らいできた。
母:「バドミントンのほうはどう?」
B:「うん。まだまだ上手くなりたいけど、今は平行線を辿ってるって感じかな…」
母:「あなたのバドミントンへの情熱は群を抜いている。それが就職活動でもうまい方向に進むといいわね」
B:「そんなにうまく行かないのが就職活動だけどね」
母:「きっとあなたにマッチした企業が見つかるはず。諦めないでね」
B:「お母さん。ありがとう」
そう言うと、Bはここでも母の存在に感謝した。何かと小さい頃からBの支えになってきて、数多くの有益な助言をしてきたのはこの母だった。少なからずBの人生を根底から支え、その土台となって頑丈な礎を築いてきた。
→この他、食卓には福井県の郷土料理であるへしこ、油揚げ、越前そば、カニ、福井の魚であるアジやアマダイ、ブリ、ハタハタなども出される。
夕飯を食べ終えた後、Bは洗面台で歯を磨いて、二階の自室に戻ると、就職活動に向けての履歴書や面接対策、自己分析などを行った。色々と企業研究や適性に見合った職種を探し出す中で、Bはまだこれといって自分のやりたいことが見つかっていなかった。それでも時間は残酷にも無常に流れ、その時は刻一刻と迫ってくる。Bは結論を出さなくてはならなかった。
B(V.O.):「私…まだ…」
そんなことを思いながら、Bはじっと目を閉じ、何かに耽るように瞑想すると、とりあえず就職活動のことは脇に置いておいて、今集中できる、所属している大学のゼミの法学の専門書をひもとき、それをじっくりと読んだ。
B(Ⅴ.O.):「あら、私、将来法律関係の仕事でもしたいの?」
そう呟きながら、黙々と法律関係のことを学ぶBの姿があった。