CAPTION: Ekaterinburg, Russia. (ロシア、エカテリンブルグ)
ロシアの音楽大学に留学しているQは今日も音大で練習を重ねていた。ヴァイオリンを弾いていて、その鍛錬に余念がない。練習前と練習後に丁寧にヴァイオリンを管理し、そのヴァイオリンを愛してきた。

→エカテリンブルグの観光名所である超高層ビルのヴィソツキー、イセチ・タワー、ガニーナ・ヤマ、血の教会、イゼットリバー、エカテリンブルグ旅客駅、コルツォヴォ国際空港、FCウラル・スヴェルドロフスク・オブラストのセントラル・スタジアムなどを映像でとらえながら
そんなQに指導者で大学教授のPは丹念に助言を施す。
P:「時に激しく、時に繊細に、ヴァイオリンは様々な音色を生み出し、奏者の感情や色とりどりの風景を表現する」
そんな言葉を紡ぎ出す時、決まってPは自分の指導方法を自問自答する。自分の言葉は真にQの内奥に迫っていて、感動を与えているかと。
P:「音色を自由に奏でるために、音の出るメカニズムを確認しておこう。松ヤニを塗った弓で弦をこすると、摩擦によって弦が震える。この繊細な振動が、駒を通じて表板の裏側に貼り付けられたバスバーを動かし、表板を震わせる」
Q:「先生。それは同時に、駒の振動はボディやボディの内部に立てられた魂柱を通して裏板にも伝わります。これらの振動が楽器内部の空洞で共鳴し、増幅されて、ヴァイオリンの音として聞こえてきます」
P:「その通りだ」
この時、PはもうQが成熟したヴァイオリンの知識を具備していることが分かった。自分の知識を上回るだけの技能と知識を、教え子が習得した時、そこで初めて自分のもとから巣立つと確信していた。
P:「Q。今日はもうここらで切り上げて、少し外に出よう。エカテリンブルグの空気を吸いに」
Q:「That’s a good idea.」
そう言って、Qはヴァイオリンを大切にケースの中に仕舞うと、後は教授のPの言う通り、外のエカテリンブルグの街並みを一緒に歩いた。
エカテリンブルグにはロシア科学アカデミー・ウラル支部のほか、国立ウラル工科大学など、多くの研究施設や国立大学もある。また、市内には多数の図書館があり、その中でもV.G.べリンスキー科学図書館は州内最大の公立図書館である。さらに、エカテリンブルグ・バレエ・オペラ劇場などの多数の劇場や楽団も集まっている。オペラ歌手も多数輩出されてきて、ポピュラー音楽も盛んで、ソ連時代末期より多くのロックバンドがこの街から生まれている。ロシア連邦の初代大統領であるボリス・エリツィン氏が誕生した街でもある。
Q:「先生。この街はロシアで第4の都市。街を歩いていると、その荘厳なイメージとは裏腹に、何だかこの街の空気に同化され、圧倒されるというか…」
すでにロシア語を習得しているQがロシア語を交えて、教授のPと会話する。Pも気を利かせて、時折英語を使っては分かりやすくQに説明する。
P:「そうだな。人口は約150万人で、ロシア国内ではノヴォシビルスクに次ぐ4番目に人口の多い都市であり、ウラルの首都と言われ発展著しい。ウラル地域の工業・文化・教育の中心地で、交通の要衝でもある。ウラル連邦管区の本部が置かれ、高等教育機関、博物館、劇場なども多数ある」
Q:「そうなんですね」
P:「さあ、少しカフェに入ろう。アイスクリームを」
Q:「この寒いのに?」
P:「ロシアではこの気温は普通だよ」
Pはそう笑って言うと、Qは郷に入ったら郷に従えの通り、Pの言葉通りにした。

・『大人のためのヴァイオリン上達バイブル』(メイツ出版/上田眞仁 監修)
・Wikipedia