いよいよPは柔道の団体戦が行われていた。Pの所属する高校は先鋒と次鋒、中堅とそれぞれ試合を行い、ここまで1勝2敗の成績だ。副将のPが負ければ、そこでヂエンドだ。反対に勝てば、大将の%へ望みをつなぐ大切な一戦だ。
Pは気合を入れて、対戦相手と向き合った。対戦相手はスペインでも指折りの選手で、ヨーロッパでも名を馳せる。しかし、Pも日本のお家芸として、その名に恥じない技量を持ち合わせる。Pは畳の上に立ち、礼をして中に入ると、中央でその対戦相手と正対して向き合った。
審判の「始め」という号令で、試合が始まった。まずはしっかりとしたPの形に入るため、組手を取りたい。序盤は互いの探り合いが続く。
1分が経過した頃、お互いが技を出し合わないので、審判が両者に「指導」を取った。それから、試合が徐々に動き始める。
P(V.O.):「大内刈は相手の懐に入って内側から相手の軸足を刈る。大外刈と見せかけて大内刈へ」
その技を試みるPだったが、相手もそれを読んでいて、なかなか決まらない。体勢を崩し、畳に寝そべってしまったPは、対戦相手に寝技に持ち込まれる。だが、しっかりと守備を図り、何とか持ちこたえた。帯を締め直し、再び畳の中央で組み合う。1分36秒が経過していた。
対戦相手(V.O.):「大外刈は相手の重心を崩して外から相手の刈足を刈る」
対戦相手が大外刈りを仕掛ける。だが、Pは見事に払いのけた。
P(V.O.):「大外刈から支釣込足は大外刈を警戒した相手の反応を利用する」
Pが支釣込足を試みたが、それを読んでいた対戦相手が見事に返し技を仕掛けた。Pが倒れるが、やっとのことで受身を取る。
審判:「有効」
Pが有効を取られた。
P(V.O.):「ヤバい。こいつ、強い」
そう思った。この時、2分13秒が経過していた。残り時間が徐々に少なくなっていく。ここで負ければ終わりだ。しかし、Pも意地を見せる。
P(V.O.):「背負い投げは引手を上げてから、相手を背負って投げる。背負い投げから小内刈と見せて、背負い投げ。なかなか決まらない。どうする?」
対戦相手(V.O.):「俺が有利だ。払腰は相手の重心を前に崩して、足を払って投げる」
時間が刻一刻となくなっていく。残り24秒となった。体力もなくなっていき、技の強度も落ちてきて、Pが不利になっていく。だが、日頃の練習の成果と、走り込みで下半身の足腰を鍛えてきた努力がここで実を結ぶ。それは精神力も人一倍磨いてきて、ここぞの場面で研ぎ澄まされた。Pはパッと目を見開き、集中力が最高潮に達した。
P(V.O.):「俺はもう…負けんっ!!」
残り9秒だった。体落はケンカ四つで、釣手が下になった時の体落。Pの得意とする体落が鮮やかに決まる。起死回生。対戦相手の体ががくっと崩れ落ち、畳に綺麗な大きな音が鳴り響いた。
→Sound Effect→対戦相手の畳に崩れ落ちた大きな音
審判:「一本!!」
逆転でPが勝利した。だが、Pは喜びを胸の内に秘め、武道の精神を重んじて礼儀を尽くして、大将の%にバトンタッチした。
大将の%にすべてが懸かっている。団体戦の優勝が懸かっている。%の両肩にのしかかるプレッシャーは計り知れない。%が畳の中央に上がり、審判の「始め」の合図で決戦の火蓋が切って落とされた。%と対戦相手が組み合う。
%(V.O.):「後輩二人の負けは俺が帳消しにする。俺たちは勝つんだ」
相手の大将(V.O.):「内股はケンカ四つで、釣手が下になった時の内股」
内股を試みる相手の大将。だが、それをかわす%。一進一退の攻防が続く。時間が刻一刻となくなっていく。
相手の大将(V.O.):「一本背負投はケンカ四つで、釣手が下になった時の一本背負投」
一本背負いを試みた相手の大将だったが、それを見事に払い、%が技を返した。
%(V.O.):「払腰は正方形ボックスを固定した足車風の払腰。ここだ!」
返し技が決まる。%が「技あり」を獲得した。残り時間が過ぎていく。だが、守勢に回ろうとしない%。ここでも最後まで粘り強く攻めの姿勢を貫く。
そして、時間が過ぎ、そのまま試合終了。Pの高校の柔道団体戦の優勝が確定した。Pは嬉しさをいっぱいに表し、部員たちが皆、%のもとに一気に駆け寄り、抱き合ってともに喜びを分かち合った。