その後、場面が変わって、Zが社内の上司と面談している形で。
上司:「客室乗務員の歩みとして、エア・ガールからスチュワーデス、そして、CA。JALの制服は10代目」
チャールズ・リンドバーグによる大西洋横断単独無着陸飛行がある。1927年の5月にニューヨークーパリ間を無着陸飛行したこのニュースは世界を駆け巡り、日本の航空関係者のあいだにも勇気と希望を与えた。
Z:「作家の菊池寛は『エア・ガールは近代的天女である』と評した、というようなエピソードもありますよね」
上司:「『空飛ぶやまとなでしこ』の才知と気品、こまやかな心配り、協調性や使命感は世界に誇れるもの。日本の大量輸送時代を駆け抜けたボーイング747も、JALでは2011年に、ANAでは2014年春に退役した」
そしてさらなるハイテク化の進んだ、燃費効率にもすぐれたボーイングやエアバスの最新鋭機が日本と世界の空をつないでいる。21世紀の新しい時代の幕はすでに上がった。エア・ガールやスチュワーデスという呼称は過去のものになっても、そのスピリッツはCAやFAに今もしっかりと引き継がれている。
上司:「JAL初日の出・初富士フライトもある。JALのCAの制服は7~8年に一度のペースで変更されている」
Z:「そうですね。CAとしては日本のおもてなしの心を大切に。旅の達人は海外ステイに工夫ありと豪語される方もいらっしゃる」
上司:「私は2人の子供の産休と育休を取得して復帰したの。家庭とキャビンをとりまとめるチーフCAもいる。また、海外基地派遣制度でバンコクへ行き、帰国後は海外基地乗員室へ配属の方もいる」
Z:「入社1年目にベルスターメンバーにリーダーとしてハンドベルでJALを奏でる若手もいます」
面談を繰り返すうちに、自然と社内規定を覚えていき、徐々に組織の軸を染み込ませていく。これがフィロソフィ。十分な社内教育が行き届いているからこそ、組織の良質な風土が醸成される。
上司:「国際線移行訓練、JALの真髄と言えるサービスをようやく学べるという喜びを味わう。JALのCAの新人訓練とキャリアパスで①サービスマインド②救難訓練(緊急脱出手順=エマージェンシー、保安対策=セーフティ、救急用具の取り扱い=ファーストエイド)③知識と技量④OJTがある」
Z:「はい。私も経験しました」
上司:「今後のキャリアとして、非常に長い目で見た時、CAからリードキャビンアテンダント、チーフキャビンアテンダント、管理職へという流れ」
面談を程なく終えたZはその緊張感から解放されて、職場の休憩室に入ると、自動販売機でジュースを購入し、からからになった喉を潤した。ごくごくと飲み、新鮮な炭酸が気持ちいい。
その後は先輩や後輩に混じって、少しだけ会話を挟み、海外の治安の情報や、最新のトレンドを出し入れし、航空業界のことのみならず、乗客との接遇で普段の日常に欠かせない話題のツールも獲得した。
Z:「あれ?まだ私は新人のつもり?」