Rにとって絶好の波が来た。
F:「決して波に逆らわないで、一緒に遊べばいい。波に合わせてランディングするというのが、基本的なサーフィンの考え方」
R(V.O.):「波の力に逆らわずに一体になる感覚を味わうんだ。その波でなにができるか、なにを表現するか…」
F:「かしこまったテクニックではない遊びこそが、サーフィンには必要な要素だ。とくにロングボード・サーフィンにはさまざまなテクニックと表現がある」
Rはテイクオフしてから、ランディングに入り、勢いよく波に乗る。素晴らしい演技が繰り広げられる。
R(V.O.):「波と遊ぶような感覚であくまでもカジュアルに楽しみたい。Casual. ときにはハードに自らをプッシュする。ときに波はハードなコンディションになる」
F:「そんな時はカジュアルなサーフィンよりもアグレッシブに波を攻めたてたい。パワーとスピード、そして抜群のグライド感…」
Q:「そうね。アドレナリンが出てストークする感覚は、格別よね。海という自然相手のサーフィンでは、決して無理は禁物だけど、時には普段の波よりワンサイズ大きな波にチャージすることも大切」
R(V.O.):「それにより、サーフィンの本質が少し見えるかもしれない。そう、それがサーフィン。Aggressive.」
素晴らしい演技を繰り広げ、Rはこの海を支配し、波と調和した。見事に溶け合った自然と人間の融合。折り重なるハーモニー。その全てがここに集約されている。最高の波がRの懐に飛び込んできた時、Rは心の中で思った。「もしかしたら、自然は人間を恋しがっていたのではないか」と。あるいは「自然が努力してきた人間に微笑み、そのお返しとして、それをプレゼントしたのではないか」と。いずれにしても、最高のパフォーマンスが会場を熱狂の渦に巻き込み、観衆をも席巻した。
毎日の鍛錬が実を結び、後は結果を待つだけとなった。審査員が採点をつけているのに長い時間がかかっている。この時の演技者たちの心境はいかがなものか。心臓の鼓動が張り裂けそうだ。
→Sound Effect→Rの心臓の鼓動の音
そして、審査結果が出て、Rが見事にトップの得点を叩き出し、見事に優勝を飾った。この留学したハワイの地で、そして、サーフィン発祥の地で、最高の栄誉を獲得した。
R:「I did it!! これであのハワイの山火事のトラウマが消し去ることができる。あの悲劇を」
そして、Rは優勝インタビューの後すぐに祖父母のもとへ駆け寄った。
R:「おじいちゃん、おばあちゃん、俺やったよ」
F:「おめでとう。お前の鍛錬の賜物だ」
Q:「今後も精進するんだよ」
R:「分かってる」
そう言って、祖父母ともに孫の檜舞台を喜んだ。