その頃、スペインのバルセロナ支店で銀行に勤めるWは会社のオフィスで部下に直接指導をしていた。 
W:「銀行業界は長引く低金利局面と景気の低迷で低調な業容が続いている。収益の源泉である融資が思うように伸びず、一時期ドル箱だった預かり資産の取り扱いによる手数料収入も伸び悩んできた」
部下:「はい。ここのところ銀行業界は景気の低迷が叫ばれています。私が入社してからはリーマンショック後からコロナ不況まで」
W:「そうね。このため、経費を抑えて利益を確保する低成長戦略に転換。支店とマンパワーを減らし、インターネットバンキングを前面に出して業務を展開し、攻めに転じる機会まで耐える作戦だ」
部下:「銀行業界の現状として、ITの進展で金融サービスは大きく変わろうとしていますよね?」
W:「その通り。スマートフォンの普及やビッグデータ、AIの活用で、従来の取引慣行は形骸化していくかもしれない。マイナス金利の長期化で、銀行は金利収入の低下にあえいでいる」
部下:「そのため、金利局面に左右されない手数料ビジネスの拡大に懸命になっている。とりわけ、投資信託、生命保険に注力している」
W:「あら、あなたももう立派な銀行員ね」
そう言って、Wは部下の成長を肌で感じると、今の言葉からは自信が感じられた。
→場面をがらりと変え、今度は化粧品会社のバルセロナ支社で働くS
この日も大会議室で、大勢の部下を前に、会議を重ねるSがいた。会議のテーブルの上には複数のレジュメ、ペットボトルのミネラルウォーターなどが置かれてある。
S:「化粧品産業はハード、ソフトの両面において知識、技術を集約したものであり、他国の追随を許さない産業になると思われる」
部下:「日本の化粧品は中国など、アジア諸国で大変な人気があります」
S:「Good point. 他の製造業に比較して、今後十分に伸びが期待できる産業だ。以前のような高度成長とはいかないまでも、バブル期以降も、我が国の化粧品業界は堅調な伸びを示している」
女性の部下:「いつまでも美しくありたいと願う気持ちは全女性共通の願いです」
そう言うと、Sはにっこりと笑って、大会議室に集まった者全員を見渡した。
S:「化粧品と聞くと、現代でいえば、女性のイメージがつきまとう。それでも、近年では男性用化粧品も売上に非常に貢献している」
部下:「甘く見てはいけませんね」
S:「どこにどういう盲点があるか分からないからな」
そして、ここからモデルを使って、メイクアップアーティストが登場し、どうしたら化粧品の販売実績が上向くかのレッスンを施す。これは社内でも定期的に行われている。
→Make-Up→モデルにメイクを施す