CAPTION:Barcelona, Spain. (スペイン、バルセロナ)
ここスペインのバルセロナで、日本の化粧品会社のバルセロナ支社に勤めるSは、同じく日本の銀行のバルセロナ支店に勤めるWと、子供二人で暮らしている。海外生活、とりわけバルセロナでの日常生活も長くなってきた。

→バルセロナの観光名所であるアントニオ・ガウディ作のサグラダ・ファミリアや、FCバルセロナのホーム本拠地カンプノウ、三頭の竜の城、パラウナシオナル(カタルーニャ美術館の本拠)、Wバルセロナホテル、ポルトベルなどのバルセロナの美しい港、ランブラス通り、スペイン広場、バルセロナ大学を映像としてとらえながら
Sがバルセロナの自宅の食卓で、妻のWと対面する形で座り、スペインのお菓子をほおばりながら、話をしている。女性の職場であるかもしれない化粧品会社に、男性として正採用され、そこで上の地位まで登り詰めたことは賞賛に値する。それとともに、内助の功で、陰ながら支えてきたWは銀行業界のことを大きく俯瞰する。
W:「2020年に世界各地で感染が拡大した新型コロナウイルスによって、経済活動が麻痺した。日本では二度に渡って緊急事態宣言が出され、飲食業や小売業で営業時間の短縮が続き、人の出入りが極端に減少した」
S:「経済的にダメージを負ったのは事実だし、そこから立ち上がるのも、まさに戦後の高度経済成長の日本のようだとも比喩できる」
W:「日本経済は、少子高齢化や非正規雇用の増加など社会構造が変化する一方、進展するITを活用したデジタル改革が進行し、DXという新しい言葉が次世代の経済を牽引するエンジンとして注目されている」
S:「経済を再建するスピードはともかくとして、兄がいる石川県の能登の復興はしっかりとしないとな」
食卓のテレビにはヨーロッパのサッカーが中継されていて、日本選手が活躍しているニュースが目に飛び込んでくる。
そんなことを見聞きしながら、Sは自分の化粧品会社での仕事ぶりを好奇な目で見ていた。変わらず単調なリズムで話す。
S:「日本の化粧品産業は、国際競争力も高い有望な産業だ。高齢化社会を迎え、今後も化粧品需要は安定的な伸びが予想される」
W:「あなたと結婚する前は、少々あなたを疑っていた。よく結婚前に相手を疑えって言うじゃない?なぜ化粧品会社に男性が?って思ってたけど、今思うと、私の目に狂いはなかった。その女性視点で考えてくれる目はまさに化粧品会社で培ったもの」
S:「まあな。話の続きになるけど、一方で、ドラッグストアや通信販売の台頭が流通市場を大きく変えている」
W:「最近は日本の男性もメイクをするって言うじゃない?男性化粧品もこれから目玉商品になるかも。ここヨーロッパでも攻勢をかけないとね」
それを受けて、Sは少々頬がほころび、自分の会社方針をあらためて確認した。
そこに高校生で柔道をしているPと、中学生でスケートボードをしているHが場に参入してきて、スパークリングジュースを片手に会話に加わる。
H:「お父さん。またニュース番組を?」
S:「チャンネルを変えてほしかったら、宿題をちゃんと済ませろ」
H:「またそれ?だから子供の部屋にもテレビをとさんざん言ってきたんだ」
W:「チャンネル権争いはどこの家庭も同じよ」
P:「宿題を終えたらっていう条件は卑怯だ」
そんな話をしては今日もバルセロナでの生活を大いに盛り上げていた。普段の食卓にはガスパチョパエリアトルティージャアヒージョなどが並ぶ。

・『銀行業界の動向とカラクリがよ~くわかる本 第6版』(秀和システム/平木 恭一 著)
・『化粧品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本(第4版)』(秀和システム/梅本 博史 著)