→場面をNのシーンに変える。
CAPTION: Kilimanjaro, Tanzania. (キリマンジャロ、タンザニア)
Nがアフリカのタンザニアの最高峰キリマンジャロの頂上付近の崖から滑落する。大きな奇声を上げ、落ちていく。だが、その時、体に巻きつけてあったロープが命綱となる。
N:「God damn it!!」
Nと一緒に帯同していた隊のクルーが、Nの手を摑み、引っ張り上げる。
隊のクルー:「Are you alright?」
N:「I'm OK. Thank you.」
隊のクルー:「Don't mention it. Take care.」
そして、再び頂上アタックを再開し、息を切らし、呼吸を乱しては帯同している隊のクルーらとともにキリマンジャロの頂上を目指す。体力が奪われ、ほぼ力が入らない中で、一歩一歩進む。
そんな中、ようやく頂上が見えてきた。今日はクリスマスイヴ。Nの姉の誕生日だ。
夜に登山を再開し、徐々にアフリカ最高峰のキリマンジャロの頂上が見えてきて、ついにそこに辿り着くと、Nは頂上で叫んで見せた。
N:「WOW!!I made it!! WOOOOOOOOOOOW!!!!」
Nは帯同してきた隊のクルーらと登頂した喜びを分かち合い、すぐに荷物の衛星無線タブレットを開き、スイッチを入れて、麓で登頂達成の連絡を待っていた地元タンザニアの調査員や子供たちとも登頂達成の喜びを分かち合った。
→画面の映像の中に漫画の吹き出しのようにメール文字を出しながら
N:「I succeeded in climbing Kilimanjaro at last. 本当に苦しかった。Thank you for your support.」
調査員:「Congratulations, N. ここにいる皆が喜んでいるぞ」
地元タンザニアの子供たち:「Yoooooooooooooou did it!!」
調査員:「クリスマスイヴに登頂するなんて、素晴らしい」
N:「Today is my sister's birthday.」
地元タンザニアの子供たち:「Wow, what a wonderful and so sweet day!」
そうした会話がタンザニアの地元の方々と日本人のNの間で続けられている。姉の誕生日はクリスマスイヴであって、クリスマスではない。そうこうしているうちに、時間も刻一刻と過ぎていき、12月25日のクリスマスになった。
N:「Thank you, Kids. This is my Christmas Present for you.」
地元タンザニアの子供たち:「What? そんなところからどうやってプレゼントを送るの?できるわけないでしょ?」
N:「それができるんだな。(写メを送信する)Here.」
写メが麓の地元の方々のもとに届く。それを見た地元タンザニアの方々は目を見開き、
地元タンザニアの女性:「So beautiful...」
N:「Right?日本ではこれをダイヤモンド・キリマンジャロって言うんだ」
その写メとは登山前にあらかじめ撮影しておいたキリマンジャロの山頂に朝日がかかったダイヤモンド・キリマンジャロの写真と、このクリスマスに東の空から昇ってきたキリマンジャロの頂上からつい今しがた撮った朝日の写真だった。
そんなことをしていては、Nはもう一つ衛星無線タブレットで連絡を入れなければならないところがあった。そこに無線を切り替え、連絡を入れる。
→場面を再度がらりと変える。
教授のBが携帯端末タブレットに着信が入ったことを確認する。その大学の教授や学生らにもタンザニアのクリスマスプレゼントを渡す。そこで講義を中断し、学生らを集めて、チョークボード前のスクリーンに映像を映しながら、Nと連絡を取る。
N:「B. I made it at last.」
B:「Wow, spectacular.」
学生①:「So sweet view. 一生忘れられないクリスマスプレゼントになりました」
学生⑪:「まさにダイヤモンドの輝き。こうしたプレゼントもいいわね」
学生⑲:「Congrats, Professor.」
N:「Don't say that,⑲. I'm NOT Professor already.」
Nがそう言うと、学生⑲は申し訳なさげに表情を曇らせながら、小声でつぶやく。
学生⑲:「Oh, sorry.」

学生①:「今、望むことは?」

N:「そうだな。今、世界中では戦争や紛争が絶えない。ここアフリカ大陸もかつて内戦や紛争が絶えず、多くの人が流血を見てきた。そうした悲惨な惨状を目にする時、そこで苦しむ人々は水、食料、電気、燃料、そして、…病院(医療)が必要であることに気づく。このご来光を拝むように、戦火がなくなることを望む。言ってみれば、I pray for World Peace.

→Close Up→スクリーンに映し出された写メのダイヤモンド・キリマンジャロと、クリスマスに撮影したプレゼントの朝日(ご来光)をこの大学の方々は見ながら
B:「お前らしいな。…少し高山病の症状があるようだな?」
N:「さすがだな。分かるか?」
B:「高山病とは、急性高山病は新しい高度に到達した時に起こる症状。頭痛、および消化器症状の食欲不振、嘔気、嘔吐、倦怠感または虚脱感、めまいまたは朦朧感、睡眠障害。高地脳浮腫は重症急性高山病の最終段階と考えられる」
N:「この患者に精神状態の変化か運動失調が認められる場合、急性高山病症状がない時は、両症状とも認める場合」
B:「(それを聞いてBはニコっと笑いながら)この時、個人差を自覚することが大切なのと、リーダーの観察力と判断力も重要。馴化のサポートとして、十分な水分を摂る。鉄分を摂る。薬を飲む。そして、心拍数でコンディションを診る」
それを聞いていた学生らは目を輝かせながら、自分たちの専門分野であり、これから必要になってくるであろう至上の知識の応酬を垣間見た。
CAPTION:Harvard University, Medical School. (ハーバード大学医学部)

 

・『登山技術全書12 海外登山 Expedition』(山と溪谷社/中村進 著)