梅雨が終わりつつあり、この後は今年も酷暑が続きそうですが、私にとっての「レコード市場」は新譜・再発ともに夏枯れの状況で、先日とりあげた御年80歳、Norma Winstoneの新作(w/Kit Downes)と、Frank Zappa師 "(')" の拡大版だけが楽しみというのは、残念なかぎりです。

さて、題記シリーズ第3弾は「黄金の1年」…1975年7回のコンサート、英・蘭・米・伊の百花繚乱です。

 

※ 高校2年生の分際で、豪華ラインアップ7件をこなしました

 

(12) Rory Gallagher

'75年1月28日@大阪厚生年金会館大ホール、S席3,200円

前年の大晦日に名盤"Irish Tour '74"を買って、正月休みはギャラガーの熱演に浸り、月末はその再現を期待して四ツ橋に向かいました。ステージ中央奥にRod de'Ath (ds)、上手にLou Martin (el-pf1台!)、下手にGerry McAvoy (b)を従えた親分は、この日も全力投球。予習は先述の1作きりでしたので、その中から"Walk on Hot Coals"を生で聴けたのが最高でした。顔ぶれが変わることなく4年目をむかえていたバック3名の演奏もツボを押さえていて、かつ熱かったです。

 

(13) Wishbone Ash

'75年2月19日@大阪厚生年金会館大ホール、S席3,300円

こちらも前年末新ラインアップによるアルバム"There's the Rub"を発表したばかりのアッシュ。Martin Turner (b, vo)、Andy Powell (g)、Laurie Wisefield (g)、Steve Upton (ds)、以上4人組の何を一番観たかったかというと、フライングVを抱えるパウェルとフェンダー系を使うワイズフィールドの絡みだったのですが、いざ現場に行ってみると、アプトンの変則セッティング … 右利きなのにハイハットは右側で、リズム・キープでは右手とスネアの左手とがクロスしない … に気がついて、ずっと眺めていました。このクローズド・ハイハット右側セッティングは、なくなる前のKeith Moonや、近年のDavid Galibaldiも採り入れています。

音の方は、旧曲も含めて"There's the Rub"で聞かれるアメリカンな色合いが強く、帰り道ふと「次来ても行かないかも…」と思いました。

 

(14) Focus

'75年6月19日@大阪厚生年金会館大ホール、S席3,000円

フォーカスはちょうど1年ぶり、2度目の来日でした。彼らの"Moving Waves"は'73年に日本で発売されてすぐに私の愛聴盤になっていましたので、前年の来日の際は既に気になっていたはずですが、そのときに何故行かなかったか、今となっては定かではありません。

このときの顔ぶれは、Thijs van Leer (kbd, fl, vo)、Jan Akkerman (g)、Bert Ruiter (b)、Pierre van der Linden (ds)。レールは期待通り八面六臂の活躍ぶりでしたが、一旦辞職していた「オランダのバディ・リッチ」リンデンがたたく組曲"Eruption"を聴けたのが嬉しかったです。

 

(15) World Rock Festival "Eastland 8-6"

'75年8月6日@京都・円山野外音楽堂、2,800円

内田裕也氏プロデュースのもと全国5ヶ所で開かれた、「国内外の音楽家をイーブンに扱う」方針のフェスでした。チケット半券には、「出演 ジェフ・ベック、1815ロックンロール・バンド(クリエーション)、フェリックス・パパラルディwithジョー、ジュニー&プロディガル・サン、ニュー・ヨーク・ドールズ、キャバレー」とあります。

☆ そもそもは、前年行けなかったJeff Beckを目当てに行ったのだと思いますが、ベックは折り悪く風邪をひいていて、札幌・東京・名古屋では演奏したものの、屋外会場だった仙台と京都は不出場でした。今回半券を再確認して「観る」可能性があったことを思い出しましたが、ちなみに、連れて来たバックはMax Middleton (kbd)、Wilbur Bascomb (b)、Bernard Purdie (ds)とのこと。

☆ New York Dollsは、申し訳ないのですが全然憶えていません。来日直前にJohnny Thundersともう一人が辞めてバンドは半解散状態だったようで、来たのはDavid Johansen (vo)、Syl Sylvain (g)のコア2人に加えてPeter Jordan (b)、Chris Robison (kbd)、Tony Machine (ds)。バンド名も、正確には"New York"が取れてただの"Dolls"だったようです。

☆ …というわけで、私にとってこの日のメインはCreationをバックにしたFelix Pappalardiでした。ちょうど彼らが演奏を始めたあたりから降ってきた雨にずぶ濡れになりながら聴いた、パパさんが朗々と歌う"Nantucket Sleighride"は格別でしたが、帰りの阪急電車の中で着替えを持たない自分(と友人)が放つ、汗と埃臭い雨の混じった「青春の薫り」には我ながら閉口しました。フェス全体のことをよく憶えていないのは、「雨に流されてしまったから」かもしれません。

 

(16) Tower of Power

'75年9月25日@大阪フェスティバルホール、S席2,500円

前年の来日から、歌手がHubert Tubbsに、ドラマーがRon Beckに替わっていました。その他はいつものT.O.P.。

 

(17) Status Quo

'75年9月27日@大阪厚生年金会館大ホール、S席3,000円

クオは前年に"Quo"、この年に"On the Level"を発表していて、Francis Rossi (g, vo)、Rick Parfitt (g, vo)、Alan Lancaster (b, vo)、John Coughlan(ds)の4人組は絶頂期をむかえていました。

この時は、8月の京都で一緒に雨に遭った友人が一緒でしたが、私はクオの中でもハード・ロック寄りの曲(アルバムでいえば"Quo")が好きなのに対して、友人はブギ系の曲("On the Level")が好みだったので、四ツ橋からの帰りの「反芻会」はセット・リスト毎に意見が割れていたのを憶えています。

 

(18) Premiata Forneria Marconi

'75年11月25日@大阪厚生年金会館大ホール、S席3,000円

メンバーは、Franz di Cioccio (ds, vo)、Patrick Djivas (b)、Franco Mussida (g, vo)、Flavio Premoli (kbd, vo)、Mauro Pagani (vln, fl)の5人に加えて、このときはまだ米国進出中でしたので、英語が達者だったBernardo Lanzettiが歌手として参加。翌年早々に発表された"Chocolate Kings"での顔ぶれでした。

私は、P.F.M.に関しては逆走することなく「国際規格」のスタジオ録音盤2作とその後の実況録音"Cook"を発表の順番に聴いていましたが、スタジオと実況とで随分と異なる印象を抱いていました。果たして、このときのP.F.M.は正に"Cook"の延長線上にあるハード・プログレな音で、これが彼らの本来の姿であることを確認しました。今でしたら「ランゼッティが歌うバージョンは貴重」と考えて、そこに力点を置いて聴くところですが、当時はそこまで考えが回らなかったのが少し残念です。終盤(「ウイリアム・テル序曲」だったか)パガーニの弦が曲中で切れたのが見えて、はらはらしました。

P.F.M.はこの27年後に2度目の来日を果たしますが、クラブ・チッタ川崎で"Photos of Ghosts"からの名曲を半泣きで聴きながら、「この聴衆の中に、'75年と'02年の両方を制覇したのは何人いるのだろうか?」と思いを巡らしておりました。

 

(7/20/2024)