前回Kenny Wheelerについて書いたので、その流れで今回は、ウィーラーの長い友達でありユニットAzimuthを共に運営した、英国のピアニストJohn Taylorと歌手Norma Winstoneにふれざるを得ません。ちょうど、テイラー率いるセクステットの1975年作"Fragment"がCD化されましたので(当初はカセットテープのみの発売だったそう)、既に'13年にCDとなっているウィンストーンの初ソロ作"Edge of Time" ('72年)とセットでまとめてみたいと考えます。

 

※ ウィンストーンのCDは、英ジャズ復刻の名門Dusk Fireから

 

まずウィンストーンの"Edge of Time"から。'41年生まれの彼女は、当時の英ジャズ音楽家達が自分の作品に女声ボーカルを織り込みたいときに必ずと言っていいほど声をかける存在で、彼女もその求めに応じて作詞と歌唱(ボイス・パフォーマンスを含む)を提供していました。このアルバムはそのような彼女の顔の広さを反映し、既に婚姻関係にあったテイラーをはじめとして、作曲陣にJohn Warren、John Surman (ともに著名なサックス奏者)、Mike Taylor (早逝のピアニスト)、演奏陣にAlan Skidmore (sax, fl)、Malcolm GriffithsとPaul Rutherford (tb)、Henry Lowtherとウィーラー (tp, fl-horn)等の一流どころが揃い、それぞれがウィンストーンの歌唱に一定の敬意を払いつつも結構強く自己表現を行っている、即ち、演奏の充実を第一義とした、あまり歌手のリーダー・アルバムらしくない仕上がりとなっています。

一方の"Fragment"。'42年生まれのテイラー3番目のリーダー作で、セクステットの他の5名のうちウィーラー、Chris Pyne (tb)、Chris Lawrence (b)、Tony Levin (ds)は"Edge of Time"にも出演、これにStan Sulzman (sax, fl)が加わっています。

このあと彼はアジムスの一員としての活動を優先するので、次作までは16年の間隔が空くこととなりますが、この間隔が彼のソロとしてのキャリアにあまり光があたらず、今でもどちらかというと地味な位置にいるひとつの原因となっています。しかしながらここでの彼は、3年前に比べてエレピの割合を増やしながら端正なソロを聴かせるとともに、他の5名が各々活躍できるよう作曲面の配慮を行っていて、その環境下で特にウィーラーが演奏者として輝いています。

曲調も、テイラーが緩急織り交ぜて展開していくソロに近い曲や、Chick Corea (初期のRTF) に影響を受けたと思しき叙情と前衛が混在する曲があったりして、彼の作曲家としての多才ぶりもうかがえます。

 

(6/22/2024)