最近は遅い時間帯のスタジオ利用者様が増加傾向で、店主としてはその事態に適合した良質のBGM補充が重要になっています。

今回は、3月24日付の弊投稿に続き、「音楽家自身が編集する深夜音楽」シリーズ … "LateNightTales"の新入荷盤2枚をご紹介します。

☆ Nils Frahm編(2015年・ALNCD42) … '82年独・ハンブルグ生まれのフラームは、古典音楽と電子音楽の巧みな結合や実験的なピアノ音楽の構築で知られています。彼はこの盤を、彼自身のJohn Cage「4分33秒」のカバー(!)とソロ演奏"Them" (特別バージョン)の他、21曲を選択して組み上げていますが、その中には「南東カメルーン、Baka族の洗濯音(リズム)」、米国の「歌うカウボーイ」Gene Autryの古録音、Vladimir Horowitzの「熊蜂の飛行」演奏、Nina Simoneが歌うSandy Dennyの名曲「時の流れを誰が知る」、Miles DavisやPenguin Cafe Orch.の演奏の一部が含まれています。

このフラーム盤に関していえば、様々な音源の「一部の集合体」である点が重要で、聴き進むうちに各々の断片が一つの大きな流れを形成して最終的には「フラームのひとつの作品」となっていることが理解できます。

 

※ 以前ご紹介した盤も含め、表ジャケットの写真はシリーズのコンセプトを上手く視覚化していて、どれも秀逸です

 

☆ Flaoting Points編('19年・ALNCD52) … '86年英・マンチェスター生まれの制作者/DJ/音楽家Sam Shepherdは、"Floating Points"を名乗って様々な形態の創作活動を行っていますが、実は私、これまで彼の「制作者/音楽家」としての作品にあまり大きく惹かれてきてはおりません。一方で彼が「DJ」としてどのような作品を拵えるのかという点については興味が残っていて、それがこの盤に「嬉しく」反映されています。

全17曲のうち彼自身のトラックは1曲。それがカナダ出身の金管奏者で、Bill Brufordとの共演以来私が30年ほど追いかけ続けたKenny Wheelerの"The Sweet Time Suite"第1パートのシンセによるカバーであるというだけで、私の評価は固まったも同然ですが、その他はMax Roach、Alain Bellaïche、Azimuth等のジャズ/フュージョン系、Sweet & Innocent、Robert Vanderbilt、The Defaulters等のソウル系の楽曲を、彼と立ち位置が近い音響系音楽家の作品に挿み込んで全体の流れを作っていて、フラーム盤との対比でいえば、個々の収録曲が元の音楽家の個性をより強く主張している印象を受けます。

ウィーラーのカバー曲の他には、仏のギターリスト…ベラーシェ'76年の2曲が素晴らしく、目下単独LPの購入を検討中です。

 

(5/25/2024)