今回は、4月発売のソフト集中買いの中から「書いておきたい」2枚、旧譜と新譜を選んでみました。

☆ "801 Live"

昔持っていたLPがどこかにいってしまってから40年余、紙ジャケットのSACDになったのを機会に久々買い戻しました。

Roxy Musicをあまり熱心に追いかけていなかった私は、最初このレコードをあくまで「Francis Monkman (元Curved Air)の足跡を押さえておく」目的で買ったのですが(それはこの後Skyの初期2作に続きます)、混沌としたグラム・ロック期に登場したロクシーのPhil Manzaneraに、モンクマン、Bill MacCormick、デビューしたてのSimon Phillipsが合流した801というバンドは、既に訪れていた更なる混沌…当時のパンク/ニュー・ウェイブ現象もどこ吹く風と言わんばかりに、1976年という年ならではの整然として高品質なプログレ/フュージョン/ロックの混合体を演奏しています。特に、マコーミック/フィリップスのリズム隊が凄い。

そこに割り込んでくるのがもう一人のロクシーOB…Enoのアバンギャルド・ポップで、この2要素の強引なミックスがこのバンドの肝でした。発足直後の取り敢えずのつかみとしてセット・リストに入れた"Tomorrow Never Knows"と"You Really Got Me"が、その股裂けぶりをよく表しています。この実況録音のあとメンバー各人があちこち立ち回らずにプロジェクトの継続にもっと熱心であれば、異種格闘技的な更に面白い音楽が聴けただろうなと感じますが、それぞれの個性が強すぎたのと、バンドに所属せずともセッション等自分のペースで活動していけば充分食べていけるようになったロック・シーンの成熟がそれを許さなかったのでしょうね。

 

 

※ 上は"801 Live"の裏ジャケと、表ジャケと同じ図柄のデカく立派なライナー。

表に誤ってギターでなくベースのネックの写真を選んでしまった、という話は有名かと。

下のPSB2人の口許は、この写真撮影の際のハレーションではありません。為念

 

☆ Pet Shop Boys "Nonetheless"

彼らのことは、'85年に"West End Girls"でデビューした当時からずっと追いかけていますが、40年以上第一線で活躍し続け英国ポップ界を代表する存在になるとは想像できませんでした。Neil Tennantの歌とChris Loweの電子楽器での音作りは(後者の技術革新はあるものの)ずっと変わりませんが、肝心のメロディの泉が未だに尽きないという才能、ライブでの自分達を含めたビジュアルを(二人組ゆえ大したことはできないことを逆手にとって)ツアー毎に優秀な外注先に丸投げしている賢さ、以上には感服します。

ここしばらくの彼らのアルバム作りは、アタマの2~3曲にキラー・チューンを並べてそこから緩急をつけながら世界を拡げていく形となっていて、そのことは制作者が変わった今回も同じです。ただし今回は①目玉曲以外を含めた全10曲のレベルが非常に高く、また、②テナントの歌がいつになく情緒的で表現の幅が拡がっており、③バックの音作りも「電子楽器対弦楽器」という形態をとり弦楽器がはっきりと独立していて、この点が目新しさを生みだしています。

ふと気がつくと、テナントは70歳、ロウも65歳になるんですね。デビュー50周年を今と同じ創造的な現役でむかえられるよう、心より祈念いたします。

 

(5/11/2024)