前回紹介したStanley/Wiggsのテクノ・ポップ系コンピCD "The Tears of Technology"を依然しつこく聴いておりまして、殆どの曲が初聴だったうちで、特にEyeless in GazaやThe Pale Fountains等が身体に染み入ってきました。

このコンピは1978年から'84年までの期間で選曲されていますが、当時の私の嗜好を振り返ると、入っているChina Crisis、Simple Minds、O.M.D.、The Human Leagueに加えて、ギター・ポップから路線変更したBill Nelsonもよく聴いていました。時代は正に「Pet Shop Boys前夜」だったわけですね。

 

'90年代に入って実験精神込みのテクノ・ポップを奏で始めたのがロンドンのStereolabで、このユニットは'10年代の活動休止を乗り越えて現在復活しているようです。活動休止中に、コアの2名のうちTim Ganeは実験を突き詰めるため新ユニットCavern of Anti-Matterを結成し、もう一方のLaetitia Sadierは専らポップ部分を継承して歌手活動を行っていましたが、今年になって彼女の7年ぶり、5作目のソロ作"Rooting for Love"が発表されました。

前作"Find Me Finding You"との比較でいえば、Emmanuel Mario (ds, etc)とXavi Munoz (b、現在のSlのメンバーでもある)が制作に深く関わっている点は同じですが、今回はこの2名に鍵盤中心のマルティ演奏者Hannes Plattmeierが加わり、どうやら彼が「サディエの声でSlを復活させたい」という強い意向の持ち主であるようで、アルバム全体に最盛期の頃のSlの「実験的ではあるが基本はポップ」な雰囲気が満ち満ちています。

それにしても、Sonja Kristinaが誰と組んでもCurved Airに、Annie Haslamが誰と組んでもRenaissanceになるように、サディエも豊かなメロディを得て「誰と組んでもSl」の領域に入ってきたようです。

 

※ サディエの新譜はLPのみ発売のようで、ヴィーガンのジャケットが見劣りしてしまいます

 

もう1枚、'80年代にThe CureやJohnny Hates Jazzに演奏者/歌手として参加したり、Prefab Sproutの一部楽曲を制作した経歴を持つPhil Thornalleyの子息であるJoseph Winger Thornalleyの個人ユニット"Vegyn"が、第2作"The Road to Hell Is Paved with Good Intentions"を発表しています。

アルバムは、前半はゲスト歌手を招いての歌もの、後半はインストものが中心となっていますが、テクノから発展しソウル音楽等も取り込んだハウスの要素が強い点は極めて今日的ながら、前述のコンピの時代に活躍した父君からの影響があるのか非常に叙情的で、その楽曲群と共通する感触があります。

 

(4/13/2024)