風の噂では、英国の木管奏者Jimmy Hastings (1938年5月12日生)が、3月18日に85歳でなくなったそうです。

彼の名を冠したレコードは僅か1作(それもJohn Horlerとのデュオ名義)ながら、私のような「カンタベリー音楽好き」にとっては、弟Pyeが率いるCaravanの初期8作、Softsの3~4作目、Hatfieldsの"The Rotters' Club"から続くNational Healthの全2作等において、彼は必ず「単なる客演者」以上のパートを委ねられていて、今振り返ると、上記したバンドのいずれでも正式メンバーではなかったことが非常に奇異に感じられます。

「音楽スタジオ店主の手習い」次作は、追悼をかねて原作でジミーが活躍する(とはいっても、私は木管が出来ないのであくまで鍵盤での模倣ですが…)ハットフィールズの曲にしようと考えています。

 

さて、ウチのスタジオのお客さまは、ピアノ/ドラム/ギター/管楽器等の個人練習目的のかたが多く、女性1人でおみえになることも数多くあります。待合室では購入したCD・DVDをBGMがわりに流していますが、嗜好が歪んでいることを自認する私としては「待合室からすぐにスタジオに入られるので一瞬のことではあるが、果たしてこの音楽ソフトはお客さまの耳・目に入ることが相応しいか?」と常に自問していなければなりません。

直近で仕入れたソフトがいつにもまして「偏って」いるとき、また、そもそもその仕入れが途絶えているときにBGMとして役立つのが"Various Artists"による「オムニバスもの」でして、その中でも、特定の著名な音楽家が「深夜に聴く」ことを想定して贔屓の曲を選択する一方で、自演の特別曲(演奏)もその中に潜り込ませてオムニバスを完成させるという手法の、英国発のシリーズ"LateNightTales"は、

☆ 私の好みの音楽家が深夜向きに選曲していて、嗜好にも合うし音像も穏当である

☆ 地下1階にあって外光の影響を受けない、「いつも夜」のウチに向いている

ということで、非常に重宝しています。

 

※ お薦めの6枚。ジャケのセンスに惹きこまれます

 

全51作をかぞえる本シリーズのうち、私が所有しているのは11枚。その中でも頻繁に流して楽しんでいるのは、次の6枚です。

1) by Groove Armada ('08) … 私は英国のエレポップ・デュオであるグルーブ・アルマーダ自体はさほど評価していないのですが、ここでのThe Human League ~ Roxy Music ~ Kitty Grant ~ Depeche Modeと続く彼らの選曲・リミックスは秀逸で、深夜の自室というよりは閉店間際のディスコティックの倦怠を醸し出します。私はこの盤でMidlakeの名曲"Roscoe"を知りました。

2) by David Holmes ('16) … 北アイルランド出身のDJ兼音楽家であるホームズによれば本盤は「愛、記憶、友情、そして死や死後の世界まで見据えた"Gods Waiting Room Mix"」だそうで、確かに全体が荘厳な雰囲気で統一されています。David Crosbyの"Orleans"や、ホームズがBP Fallonと共作した鎮魂歌"Henry McCullough"が素晴らしい。

3) by Hot Chip ('20) … 英国のエレポップ・ユニットによる編集で、本人達が提供する「ここだけの曲」(Velvet Undergroundの"Candy Says"のカバーを含む)が主導し、他の音楽家の曲が華を添える内容となっています。

4) by Lindstrøm ('07) … 私が大好きなノルウェイの電子音楽家の編集で、前半のSly & the Family Stone ~ Carly Simon ~ Todd Rundgren ~ George Dukeと続く流れ、後半の本人によるVangelisのカバー ~ Dusty Springfield ~ Pekka Pohjolaの流れが、各々流麗に作り込まれています。

5) by Midlake ('11) … 上の1)で初めて聴いた米・テキサスのバンドが、Fairport Convention、Steeleye Span、The Flying Burrito Bros.、The Band等の佳曲に、自身によるBlack Sabbath "Am I Going Insane" (!)のカバーを加えながら、全体としてほの暗くフォーキーな1枚に仕上げています。

6) by Röyksopp ('13) … ノルウェイのエレポップ・デュオがディペシュ・モード"Ice Machine"をカバーする他、Rare Bird、Johann Johannsson、F.R. David、Thomas Dolby、John Martyn等の名曲を選択していて、6枚のうちでは最も聴きごたえがあります。

私はディペシュ・モードは初期の"People Are People"くらいしか耳に引っ掛かってこないのですが、このシリーズで聞かれる彼らの曲は、何故かとても魅力的に感じます。 

 

(3/24/2024)