私は1972年2月のC.C.R.大阪公演を手始めに数多くのロック音楽コンサートに行き、一方で数多くの実況録音盤を持っていますが、「自分が立会ったコンサートの実況盤」は殆ど所有していません。私の中で「実際に足を運んだのだから」という要素は、「じゃ買うか」ではなく「買わなくていいな」の方にはたらいてきたわけです。

とはいえ、今から47年前の2月、Frank Zappa師唯一の来日公演のうち1回限りで行われ、かつ幸運にも観ることができた大阪公演が、後日のFM放送のために録音されていて(放送されたか否かは不明)、それが(正規盤ではないにせよ)CD2枚組"Osaka Nights"として発表されるのであれば、聴かない手はありません。20年以上前に同じ形式で出された"The Eyes of Osaka"と同じ音源と思われますが、そちらは入手困難となっているため、今回の"Nights"(何故複数形なんだろう…?)は嬉しい再発です。

早速聴いていますが、音の立ち方はいかにも「FM放送向け」可もなく不可もなしといったところで、演目に関しても、大阪の14日前に行われた豪・シドニーでの実況"FZ:OZ"を既に聴いているので、特に目新しさは感じませんでした。ただし「47年前、自分が確かにここに居たんだ」という曰く言い難い感慨がおそってきて、当時の感想…「バンドのダウンサイズはしょうがないとしても、George Dukeが居なかったのは少し残念だな」、「なんでベースマンが今更Roy Estradaなんだろう?」、「予習が不足していたな」、「強引に誘った友人が大阪厚生年金会館からの帰り道『イーグルスに行けばよかった』と半泣きになっていたな」…等々が蘇ってきました。

 

※ 左の裏ジャケット写真はFZが東京で参加した「浅草花魁道中」がらみのものでしょうか?

コウメさんっぽい人が映っていて、なんかヘンな絵面ですね

 

当日の演目をあらためてながめ、「予習不足だった」という印象を検証してみたのですが、

☆ 既に私が知っていた曲… "Dirty Love"・"Advance Romance"・"I'm the Slime"/3曲

☆ 私が一番最初に聴いた"Over-Nite Sensation"以降の全アルバム5作を追っかけていれば理解できた曲… "Incan Intro/Outro (Inca Roads)"・"Stink Foot"・"San Ber'dino"/3曲

☆ 更に私が"Freak Out!"まで逆走していればわかった曲… "How Could I Be Such a Fool"・"I Ain't Got No Heart"・"I'm Not Satisfied"・"Chunga's Revenge"/4曲

☆ 当時未発表で予習が不可能だった曲… "Naval Aviation in Art"・"The Poodle Lecture"・"Filthy Habits"・"Black Napkins"・"Honey, Don't You Want a Man Like Me?"・"The Illinois Enema Bandit"・"Wind Up Workin' in a Gas Station"・"Tryin' to Grow a Chin"・"The Torture Never Stops"・"Zoot Allures"・"Ship Ahoy"/11曲

… というふうに未発表曲が圧倒的だったことがわかり、まめに予習をしていたとしても中々厳しいコンサートとなっていたと理解しました。高校2年生では「イリノイの浣腸強盗」・「拷問は果てしなく」等の曲に初聞で正しく反応できないですよね。

 

※ '76年2月3日のチケット半券と、当日勢いで買った

LP "Fillmore East June 1971"のおまけで付いていたサイン色紙

 

その他の気付きとしては、

☆ 本盤は非公式であるが故に、師の「後日の手」が入らない「ザッパ/マザーズの無修正実況」として貴重だと感じます(前述の"FZ:OZ"でさえ手が入っていました)。

☆ "Chunga's Revenge"の中間部でSantanaの"Jingo"をサンプリングしています(これは14日前の"FZ:OZ"では聞かれません)。

☆ アンコールの前に師が我々聴衆からのリクエストをとっていたことをはっきり憶えているのですが、今回それが正確に…

「これから"Dinah-Moe Humm"か"I'm the Slime/San Ber'dino"を演奏する。どちらがいいか諸君の拍手で決めたい (拍手を聴いて) なんだ、同じくらいだな。じゃあ、"I'm the Slime"を演る」

…だったことがわかりました。

 

(2/10/2023)