今週は休みをいただき小旅行に出て、後付け「旅行支援」で宿代が下がり、行った先でお土産用のクーポンをもらい、と小さな幸せが続きました。サラリーマン時代に仕事の縁が深かった10年上の先輩とも久々に会食しましたが、先輩も私も元気なので、この世代定番の話題のうち「自分の病気」については一切出ず、一方で会社OBの「蓋棺録」を盛んに交換することとなりました。

そんな近況の下で、個人蒐集LP回顧を音楽家名アルファベット"N"から再開させていただきます。

☆ 既に本ブログ別項で述べているNational Healthの隣がNazarethで、彼らのことを今語るとすれば本年7月25日に亡くなったギターリストManny Charltonについてふれない訳にはいかない、と考えていた矢先、今度は11月8日に歌手Dan McCaffertyの訃報が届きました。

実質1972年からハード・ロックを聴き始めた私にとって、ナザレスは本格的な日本進出と同時に聴くことができた数少ないバンドです(他はUriah Heepくらいか、と)。第3作で日本デビュー盤である"Razamanaz"は、バンドが一丸となって演奏を繰り広げるタイトル曲→Leon Russellのカバー"Alcatraz"→Woody Guthrieのカバー"Vigilante Man"→第2面のオリジナル・ヒット曲"Bad, Bad Boy"→"Broken Down Angel"と隙がなく続くアルバムで、「ハードだけど低湿度で重くない」音はとても魅力的でした。マカファーティの強靭なのど、チャールトンのリフ・速弾き・スライドと縦横無尽なギター、秀逸なカバー選曲のセンスは、その後のアルバム"Loud 'n' Proud"、"Rampant"に共通する特徴となっています。

天邪鬼な私は、彼らが念願だった全米ヒット"Love Hurts"(奇しくも48年前のマカファーティの命日に発表)を生んだあたりからこのバンドへの興味を失っていきましたが、一方彼らは休むことなく活動を続けており、後進のハード・ロッカーから多大な尊敬を得ています。初代ドラマーDarrell Sweetは既に'99年に亡くなっていて、今年チャールトンとマカファーティも彼に会いにいってしまいましたが、唯一残されたオリジナル・メンバーPete Agnewのリーダーシップのもと、スコットランドの国民的バンドのひとつとして頑張っていくことと思います。

☆ トラムペッターIan Carr率いるジャズ/ロック・バンドNucleusは、Vertigoレーベル所属なので国内で発売されるとすれば日本フォノグラムからだったのでしょうが、例によって「日本盤」というのを見た記憶がありません。従い、その存在を知ってレコードを聴きたいと感じた時には殆ど全てが「希少盤」となっていて、たとえ虫食いでも揃えるのが大変でした。

バンドは、カーを軸として彼以外は錚々たる音楽家が入れ替わりながら'60年代末から約20年続きますが、奏でる音は基本的に穏当なジャズとロックの混合で、後半は当然のこととしてフュージョン音楽の色合いが濃くなります。その中でも、初期の"Elastic Rock" ('70)、"We'll Talk about It Later"、"Solar Plexus" ('71)あたりは、Soft Machine加入前のKarl Jenkinsが持つクラシック音楽の素養が反映された独特の音像を有しています。

 

※ NewOrder "Lost Sirens"とカーの"Belladonna"の間は、

特殊ジャケの影響で購入時既に背文字が潰れていたニュークリアス「その話は後でね」です

 

☆ アルファベット"O"の一番手は"O"、判りづらいので"A Band Called O"・"The O Band"とも呼ばれる、Dover海峡の南寄り、Channel諸島出身の5人組の第3作"Within Reach"です。'76年の発表ですが、豊かなメロディのオリジナル曲が達者なギター/ピアノにより紡がれる軽快なロックンロール作品で、音の感触は「オトナの米英混合」です。

☆ 友人からのプレゼントである、ハンガリーのバンドOmegaの'74年作"200 Years after the Last War"を挟んで、米・ボストンのバンドOrchestra Luna唯一のアルバムが続きます。'74年、Jeffrey LesserとRupert Holmes制作の、ミュージカルやヴォードヴィルの要素を散りばめたポップ作品で、リーダー/鍵盤奏者Richard Kinscherfの書く曲と名伯楽レッサー/ホームズのプロダクション/アレンジメントがうまく融合して、発表当時最新型で、そして永久に古くならない、懐古的な世界が味わえます。

☆ その隣、Orchestral Manoeuvres in the Darkのデビュー作は、既出Martha and the Muffins "Metro Music"に続くDindisc第2弾LPですが、先行シングルに比べて(早くも)角が取れた印象で、聴いた当時は「もうしばらくの間、尖ってても良いのではないか」と感じておりましたが、彼らはそのおかげで長く活躍できたのかもしれません。

 

※ O.M.D.の型抜きジャケット(by Peter Saville)からインナーを半分出して、

ルナのジャケットを透かし見る図

 

(11/12/2022)