今回は掲題シリーズ"H"の順番ですが、"H"は枚数が少ないにもかかわらず、私にとって"G"と同様に大切な音楽家が沢山います。下の写真に映る背文字のうち、Hatfield and the North、Annie Haslam、Dick Heckstall-Smithは既にブログでとり上げ済ですので、彼ら以外について筆を進めてまいります。

☆ まずはプログレ・ギターリストの括りで「3人Steve」…Hackett、Hillage、Howeをまとめて。同じ名前と苗字イニシャルのギターリストが、同時期Genesis、Gong、Yesそれぞれに居たというのは、少し出来過ぎの感があります。

ハケットとハウは後に双頭バンドGTRの結成にまで至る縁の深さですが、その手前のソロ第1作はともに親バンドに在籍しながら作ったもので、中身も「より簡素、かつ他所行きでない親バンドの音」という点で共通しています(歌がお上手でない点も)。ハケットは今やジェネシスよりもジェネシスっぽい音の継承者として、ハウは故Chris Squireに代わるイエスの屋台骨として、現役活躍中なのは嬉しい。

ヒレージは、ゴングから独立後、演っている音楽は変化しているもののソロ音楽家としての経歴を続けています。その初期、ソロ第1作"Fish Rising"から第4作"Green"まではそれぞれ趣が異なりますが、私は今聴いてみると、Malcolm Cecilとの異種格闘技みたいな第3作"Motivation Radio"を一番面白く感じます。

☆ Van der Graaf Generatorについては本シリーズ"V"の項で詳しく語ることとなりそうですが、その主宰者Peter Hammillのソロ作については実はあまり熱心でなく、コレクションを振り返ると肝心なところ("Fool's Mate"、"In Camera"等)を外している気がします。その中で、親バンドのメンバー・チェンジのタイミングで新メンバーとともに作られた"Over"は、アクースティックでストレイトな感触を有していて、等身大の音楽家としての魅力を湛えています。私にとってこの盤は、大学入学・上京という大きな環境変化と相まって、聴くたびにその当時の心象がよみがえる貴重な1枚です。

☆ Keef Hartley BandのMarqueeでの実況盤"Little Big Band"は、リーダー(ds)をはじめとしてHarry Beckett (tp)、Chris Mercer (bs)、Lynn Dobson (ts/ss)、Barbara Thompson (as)、Miller Anderson (g/vo)、Gary Thain (b)、Pete York (per)といった有名どころが勢揃いで、熱々の演奏を繰り広げています。同様に、Hawkwindの実況盤"The Space Ritual"も全編ぎらぎら、トリップ音楽の祭典で、彼らのスタジオ盤ではえてして欠けがちな求心力(詩人がいるわ、電子楽器・管楽器それぞれの専任奏者がいるわ、果てはH.M.ベースマンLemmyがいるわ、で、リーダーDave Brockはさぞかし大変だったでしょう…)が強く感じられます。

☆ 同じ"H"ではじまるThe Human Leagueから派生したHeaven 17は、「兄」リーグの音をソウル/ディスコに近づけた都会的な音作りが私にとってより魅力的でしたが、メンバーGlenn Gregoryの声質はやや苦手で、曲によってゲスト歌手を都度指名する手法を採るもう一人の「弟」British Electric Foundationの方が好ましかったです。

 

※ ハズラムのソロ第1作英盤、H&TNの"Afters"、「マイク・ヘロンの評判」等、お宝沢山

 

☆ あまり熱心なファンではなかったHenry Cow(主要メンバー4名が"Henry Now"と名乗って活動を再開しているようです)、Incredible String Bandの「私にとって2番目の人」Mike Heronに続いて、Kevin Hewick。この人は、以前"D"の項でふれたオムニバスLP"A Factory Quartet"、The Durutti Columnの裏面で収録されていた起伏に富んだ曲調と上手な歌を聴いてソロ作を買い求めたもので、中身はCherry Redレーベルらしい、少し風変わりなS.S.W.の音です。

☆ 現役の「植物性」ポップ音楽家Nick Heyward、曲作りが巧みな英国産ソウル・ユニットHindsight、Strawbsから独立した良質のポップ・デュオHudson-Fordに続くHue and Cryは、H-Fが10年遅くデビューしていたらこういった音になっていたと思われる、ソウル風味の強いスコットランド出身の兄弟ユニットです。彼らも現役ですが、初期の第2作"Remote"(1988)はN.Y.録音で、"Ordinary Angel"、"Sweet Invisibility"等の印象的なメロディがBoz Scaggs似のPat Kaneの声で歌われる、非常に洗練された作品です。

☆ Chris Hunterは、'80年代の"Brit Funk"ムーブメントで活躍した高音のブローが冴えるサックス奏者で、どこのバンドで"No Credits"で客演していてもすぐに彼と判る、記名性の高い演奏を行っていました。ソロ第1作"Early Days" ('80)は、Brian Godding (g)、Robin Smith (kbd)等のベテランを従えて録音した純ジャズ・ロック作品ですが、このとき既にMike Westbrookとの関係は始まっていたようで、ウエストブルック作の"July 79"を、御大自身が"The Cortege"で世に出す2年前に採りあげています。

 

(10/2/2022)