ニュースでご存知の通り、沖縄県名護市長選挙の結果は、米軍基地の辺野古移設を反対する現職の稲嶺進さんが再選しました。
沖縄の地元メディアは「大勝」とか「圧勝」と報じていますが、全国紙では約4,000票差(前回は約1,000票差)という「数字だけ」で判断したため、そのような表現を使っていません。
しかし、前々回のエントリーで沖縄県選出の「糸数慶子」参議院議員の動画にも言及されているように、基地反対の「オール沖縄」の世論の結果を示す選挙結果として、今秋に行われる沖縄県知事選挙と合わせて重要な意味を持つものだと思います。
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沖縄(県民の意識)が変わりつつある……。
その反対に、昨日告示された東京都知事選挙ですが、脱原発候補者一本化の迷走と混迷ぶりに、僕自身大変驚き、そして落胆もしました。
公約どころか、正式な出馬会見も行っていない時点で、先走って「なぜ細川支持」を表明する必要があったのか?
急ぐ理由が分かりません。
「一本化は不可能」とだけ発表すれば良かったのではないか。
この「脱原発都知事を実現する会」の会見に出席した人たちの多くは、集会やデモで良く見かける人ばかりだったので——中にはデモの後の居酒屋で同席し、名刺交換をした方もいた——、軽率すぎる行動に落胆せざるを得ませんでした。
会見の質疑応答によると、「勝てる候補者を推したい」との思いが強いのは理解できました。
……でも、脱原発以外の公約が分からぬままに支持を表明するなんて、やっぱり拙速すぎます。
それ程までに信頼できる候補者なんでしょうか、細川氏は……。
自慢ではないですが、相対的に見ても僕はこれまで「それなりに」多くの脱原発のデモや集会に参加して来ました。
そこでは数多くの(元)政治家や知識人の姿を見かけて来ましたが、細川氏の姿を見たことは一度もありませんでした。
ということは「脱原発都知事を実現する会」の中で細川氏に直接会った方も、殆どいないのではないでしょうか……。
原発再稼働反対の現場に立っている者として、会ったこともない候補者を「勝てるから」という理由のみで支持する感覚が今ひとつ分からないのです。
新聞やテレビを通した映像のみではその人本人の判断は出来ません。
これは、デモや集会に参加している方なら誰しもが感じる、もはや「常識」のはずだと思っていたのですが……。
「脱原発都知事を実現する会」はともかく脱原発の実現を最優先し、その他の課題については「目をつぶる」といった大胆な選択を決定したのだと思います。
「選挙は勝たなくては意味がない」との強い意志(信念)は感じられますし、現実はそう甘くないのですから、滅多にないこの脱原発の機運の盛り上がりを確実なものにするというのも、共感できなくはありません。
しかしそれでも、なぜか細川氏支持には同調できない、割り切れない違和感が僕には残るのです。
脱原発のデモや集会に参加している人ならば、大方何かしらの「違和感」を感じているのでは、と推察しています。
おそらく「脱原発都知事を実現する会」も同じ思いを感じているのかもしれませんが……。
脱原発候補の一本化について、「三宅洋平」さんがブログで意見を述べています。
頭脳明晰な三宅さんは、この「違和感」の本質とは何かを探求しています。
❝細川氏の立候補が判明して以来、
脱原発票の票割れを恐れて「脱原候補一本化」の声が多くあがっています。
宇都宮さん支持を表明している僕のところへも、
「なんとか宇都宮さんに降りてもらえるように頼んで欲しい」
という依頼もきました。
しかし、
・まず細川さんの事を知らない
・「脱原」以外の政策もまだ伝わってこない
・今から細川さんを知るには、公示まで時間がなさ過ぎる
・小泉さんがやってきた事を僕は忘れられない
郵政民営化をはじめとする自由化という名の国の明け渡し、
イラクへの自衛隊派遣(戦争ができる国作りの端緒を切った)、
辺野古のV字滑走路にGOを出した時の首相も小泉さん。
といったような状況で、
・小泉さんたちの背後にシェールガス利権などが噂されているが、
今のところ僕の中で「脱原発」以降のエネルギーシフトが
再びそうした「メガ」な方向へ行く事が適切だとは思えない。
・これから何年かかろうと「市民」がもっと密接に政治に関わっていく
社会を作っていくという僕の目的の上で、細川さんには申し訳ないが
宇都宮さんと比べて100倍くらいの距離を感じてしまう。
といった理由からお断りさせていただきました。
宇都宮さんと僕ら市民の間には、明確に見える「糸」があります。
彼は常にオープンに扶けを求め、
その明晰な頭脳で寄せられた僕たちの意見と情報を解釈し、
まさに我々の代表として発言し、行動してくれる事でしょう。
つまり、共に行動してくれる、という事です。
僕ら、本当に時代を変えたいんですよね?
一本化を退ける宇都宮さんの会見です。
「あなたたちの云う運動とは、その程度のものですか」
と問う姿勢に、ハッとさせられた人も多いのではないでしょうか。
〈動画〉〔引用者注:動画は引用の後に貼り付けます〕
宇都宮けんじさんって、どんな人?
http://utsunomiyakenji.com
脱原発のシングル・イシューで投票して、本当に良いのだろうか?
その通りです。RT @Fand3klarry: 原発稼働、集団的自衛権、憲法改正、TPP、みんな根っこは一緒だと思います。脱原発は最優先ながら、これら一連のイシューの根っこを理解しない候補者は、どこまで行っても信じられません。なぜならやがて政策間に自己矛盾を来たすからです。
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2014, 1月 20
細川氏の出馬会見を観ても、脱原発のシングル・イシューで良いのか、その疑問が不安に変わるばかりです。
新自由主義的な経済政策は、世界中で経済格差を広げているのですから。
「勝たなければ意味がない」のか……。
「ただ勝つだけではいけない」のか……。
❝日本人たちよ、私たちよ、これでいいのだろうか?
これでいいのだろうか?—— 大 島 渚
❞
まだ選挙戦が始まったばかりなので、急いで答えを出す必要はありませんが、おそらく投票所で記入する直前まで自問自答を繰り返すのだろうと思います。
同じく脱原発を公約にかかげる弁護士の「宇都宮健児」さんですが、以前から最大の弱点は「知名度の低さ」だと指摘され続けて来ました。
僕は1990年代から宇都宮さんの姿をよくテレビで観て知っていたので、「知名度の低さ」との指摘にはあまり納得できませんでした。
今回の「脱原発候補の一本化」に関して何度も耳にしたので、身近な人に「宇都宮健児を知っています?」と訊いてみました。
……。
上記の指摘の通り、多くの方はご存知ではなかったようです。
僕の周りでは、一昨年の東京都知事選挙で初めて知った方が多かったようです。
しかし……、「知名度が高い」だけで競うのは「人気投票」そのものです。
やはり、「この都民にして、この都知事(猪瀬氏)」だったようですね……(>_<)。
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◆ 東京なのに〝宇都宮〟、弁護士なのに〝けんじ〟〈東京都知事選挙〉|Down to the river......
一昨年の東京都知事選挙の際には、「猪瀬氏はヤバい」とブログで警告したのにも関わらず、彼が当選したわけですから。
「知名度」だけ、「イメージ」だけで候補者を選ぶと、当選後が大変なので、その経験から今回の「細川氏支持」に対して余計に警戒心を抱かざるを得ないのも事実です。
続き。…近々、仲間を糾合して、細川氏応援の記者会見を開くという。宇都宮さんじゃ勝てないが、細川さんなら勝てるから。なぜ、そう判断するのか? 細川さんは有名だから。つまり既存マスコミが取り上げるから。端的に言えば、細川氏はテレビで見たことがあるが、宇都宮さんは見たことがないから。
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2014, 1月 20
「宇都宮さんは見たことがないから」……?
う~ん、僕は何度か見たことがあるのです。
例えば、有名な次の番組——。
「この都民にして、この都知事」……。
やはり、宇都宮健児さんを知らない「この都民」が投票する都知事選挙では、知名度がある細川氏を応援することが最善な選択なのでしょうか?
……再び映画監督の「大島渚」さんの言葉が、僕の頭の中をよぎります。
❝日本人たちよ、私たちよ、これでいいのだろうか?
これでいいのだろうか?—— 大 島 渚
❞