国際的に通用する医療人を目指して 「知っている知識」から「使える知識」へ

2010. 10. 1

 聞き手:日経BP社日経BPnetプロデューサー 阪田英也
 構成:21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 原田英子

明日の医療を担う若き医学生たちの国際的な組織がある。

IFMSA (International Federation of Medical Students’ Associations、国際医学生連盟)である。

その日本支部代表で、宮崎大学医学部5年生の天満雄一氏に、

IFMSAの組織、活動内容、そして活動を通して見えてくる日本の医学生の悩み、医学教育の問題点などを聞いた。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/gdn/20101001/247104/

―― 日本では、法律上できないことになっていますが、早いうちからのペーシェントタッチは必要だと思いますか?


天満


どこの国でも学生のペーシェントタッチが当たり前というわけではないけれど、

他国の医学生と比べて、学んでいることはほとんど同じですし、

日本の医学生の知識が劣っているとは、僕は思いません。

ただ、知っているという意味においては劣っているとは思わないけれど、

できるという部分に関しては、そうは言い切れない


というのは、「知ってる」を「できる」に変える教育が、日本では徹底されていないから。

テストの知識でしかない

それが実際に現場に出て、患者さんを診る段階で活かされるかというのは別問題です。


たまに、患者さんの了解を得て、問診をとらせてもらったり、聴診器を当てさせてもらったりすることがあります。

もちろん、担当医師の監督下においてですが。

そういう時、例えば、聴診器に関していうと、クリック音が聞かれるとか、

いろいろ教科書で異常音を学んだり、コンピューターではっきりと聞き取れるような音よりも、

実際にあてさせてもらうと、「ああ、なるほど」。

すると、もう忘れないですよね。

そういうことが、知識を実際に使えるものとして根づかせる段階では必要だと思います。

(中略)

―― 今の医学生たちが、共通して抱えている不安とか悩みはありますか?


天満


 まず、打たれ弱くなっているという気はします。

周りの学生を見ていて思うのは、不安というより、

モチベーションが1年生のときから、どんどん下がっていくこと。

安定を求めて、堅い職業だからとか(今は、必ずしもそうではないとしても)、偏差値がよかったからとか、

そういう理由で医学部に入ってくる学生もけっこういることはたしかですが、

それでも1年生のときは、やはり医者になりたいというモチベーションが、まだ高い

先生が呼びかければ、1年生から積極的に研究室にも行ってみたり、

どんどん先のことを勉強してみたり、そういう学生は多いのに、

学年が上がるにつれて、テストテストで追いまくられ、「最低限の合格点を取ればいい」となってくる。


途上国では、医学部に行くのは社会的な地位が高い人の子弟が多くて、

小さいときから国を背負うくらいのモチベーションをもって育てられ、またそういう教育を受けてきています。

だから英語を使わない国でも英語はネイティブ並みにしゃべるし、

国際的な感覚も身につけている人が多いと感じます。


ヨーロッパでは、もとから階級社会というのがベースにあって、

「ノーブレス・オブリージ」、つまり、「富める者は、果たす義務がある」という意識を

文化的に持っているという印象を受けます。


その点、日本の医学生は、社会に対する責任というか、社会貢献意識は、まだ低いと感じます。

―― モチベーションが落ちていくことに対する打開策など、

    これからの医学生にとって、どんな工夫が必要だと思いますか?


天満

 例えば、ペーシェントタッチは、モチベーションを落とさないための一つのキーだと思います。

やはり現場を見て勉強すると、頭に残ります。

実際の病気を、ただ教科書で読むだけでは、単に「知っている」で終わってしまいますが、

その患者さんを診ると、「使える知識」として、残り方が全然違います。




(中略)

ブラジルに行ってたときに、ちょっとおもしろい話があって、

スウェーデンから研究のために来ていた30歳くらいのスーパーバイザーが、

いつも白衣を着たまま、外のカフェにご飯を食べに行くんですね。

「どうして、脱がないんですか?」と聞いたら、「これを着てるとかっこいい」。


昔は、たしかに“お医者さま”だったと思いますが、

今は患者さんたちもいろいろな情報を得て、不都合があったら訴えられる時代です。


でも、僕は今、IFMSA-Japanの代表として、いろいろな人と出会わせてもらって、しゃべらせてもらって、

医学教育だけではなく、医療を含むさまざまな問題に対して意識的に働きかけていける立場にあります。

なり手が少ない立場ではありますが、おもしろい。


自分が楽しんでやれる、それが一番のモチベーションになっています。

授業だけでも忙しいけれども、「やれと言われたことだけをやる」教育を受けていると、

モチベーションが下がってしまうので、

何事も学びたいことを自ら発見して、積極的に首を突っ込んでいこうと思っています。




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言われたことだけやってても、面白くないですからね。


僕も、何か公けの講演会とかにも参加してみようかな。







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