本書は、著者がコーネル大学で行った研究や60余年のキャリアで遭遇した、栄養学会や医学会の利権の構造について書かれています。さらに、『チャイナ・スタディー:葬られた「第二のマクガバン報告」(合本版)』で詳述されているPBWF(プラントベース・ホールフード)食が、「人間の食事として最も健康的である」との論証となる複数の研究も紹介されています。


食べ物の選択、何を食べるか?

1、私たちの健康を決定づける要因として、DNAや環境の中に潜んでいる邪悪な化学物質の大部分よりも、私たちが日々何を食べるかのほうが、ずっと大きな影響力を持つ

2、食べ物を選ぶことで、がんや心臓病、2型糖尿病、脳梗塞、黄斑変性、偏頭痛、ED、関節炎を予防することができ、予防可能な病気はこれだけにとどまらない

3、良いものを食べ始めるのに遅すぎるということはない。良い食事を取ることで、これらの症状の多くを改善させることさえできる


「植物由来の食べ物を、できる限り自然の状態に近い形(ホールフード)」で食べましょう、ということです。つまり、「多種多様な野菜、果物、生のナッツや種、豆類、全粒穀物」を食べ、「加工度の高い食品や動物性食品」、「油、塩、砂糖、小麦粉などの精製炭水化物」は最小限に抑えます。カロリーの80%は炭水化物から取り、10%は脂質、残り10%をタンパク質から取ると書かれています。


これが本書の「プラントベース・ホールフード(plant-based whole food、植物由来の自然食品)」食の全容です。


なぜ、PBWF食が人間にとって最も健康的な食べ方なのでしょうか?

本書では、ホーリズム(holism※1、全体主義)とリダクショニズム(reductionism、要素還元・細分主義)の考え方を比較し、それぞれが健康におよぼす影響を説明しています。


リダクショニズムは、個々の栄養素が持つ効果に焦点をあてる考え方です。例えば、「ベータカロテンやビタミンE、その他の抗酸化ビタミンが、心臓病やがんなどの病気を予防する」仕組みが分かっているから、栄養素が配合された錠剤やサプリメントを摂取すると病気が予防できる、といった考え方です。しかし、栄養素単独(サプリメント)では、病気は予防されないこともわかっています。むしろ、死亡リスクが増加した結果さえあります。※2


ホーリズムの考えに基づくと、リンゴを丸ごと食べるから、あらゆる栄養素(食物繊維を含む)※3が摂取でき、その相互作用が健康によい、となります。


著者は、「リダクショニズム頼みで栄養の研究や理解をしているうちは、本当の健康が手に入ることはありません」と述べています。


私も、成分の効果などを気にして、トマトジュース(リコピン)やニンジンジュース(ベータカロテン)などを飲んでいた時期があります。今後は、PBWF食を念頭に、食べ物と食べ方に気をつかっていきたいと思います。


※1

著者のスペルは「wholism」


※2

G. S. Omenn, Chemoprevention of lung cancers: lessons from CARET, the beta-carotene and retinol efficacy trial, and prospects for the future, European Journal of Cancer Prevention, vol.16, issue.3, pp.184-191, 2007.

DOI:10.1097/01.cej.0000215612.98132.18

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17415088/


※3

リンゴの成分一覧

https://www.nutritionvalue.org/Apples%2C_with_skin%2C_raw_nutritional_value.html?size=100+g