インテグリンによる転移制御はさまざまながんで共通③ | the east sky

the east sky

いつの日か、すべての進行乳がん(切除不能乳がん・転移乳がん・再発乳がん)が根治する日を願っています。

転移する能力を持つ乳がんの転移臓器は、原発巣の乳がん細胞から分泌される、エクソソームの表面に発現しているインテグリンの種類により決まることをお話ししました。





逆に言えば、たとえ全身に乳がん細胞が飛び散っても、またたとえCTC(循環腫瘍細胞:Circulating Tumor Cells)が検出されたとしても、転移があるとは限りません。


という事で、CTCが検出されれば、どこかにがんが居るという存在診断には有用だと思いますが、CTCの薬剤感受性を調べても、必ずしも転移巣に適した治療を反映しているかどうかは疑問です、と以前言った理由の一つがこれになります。





この乳がんの転移巣形成のメカニズムは、乳がん特有のものなのでしょうか。


いえ、そんな事はありませんでした。


多くのがんで見られる、共通の原理でした。





上は先の論文に掲載されている図です。


一番右は、肝転移を生じた腫瘍が分泌した、インテグリンについて調べた結果を示しています。


ぶどう膜悪性黒色腫でも、大腸がんでも、膵臓がんでも、胃がんでも、肝転移したがんはすべて、原発巣から分泌されたエクソソームの表面に、インテグリンb(べータ)5が発現している事を示しています。


その左側は肺転移です。


肺転移を生じた腫瘍は、乳がんでも、骨肉腫でも、横紋筋肉腫でも、ウィルムス腫瘍でも、悪性黒色腫でも、分泌したインテグリンの表面にはすべて、インテグリンα6が発現している事を示しています。


同様に脳転移を生じる乳がんと悪性黒色腫ではインテグリンb(べータ)3です。



よって、遠隔転移したらもう治らない、全身病だから何が何でも全身治療しか無い、という事は必ずしも正しくなく誤りである、と理解出来るかと思います。


これのみではなく、さらに別の理由でも、それぞれの臓器への転移機序は異なります。


よって、遠隔転移を根治させるためには、それぞれの癌種、それぞれの転移臓器に合った、治療戦略を立てる必要がある、と私は考えます。


もしかしたら、乳がん以外で私と同じ様な発想をされる先生が居られたら、乳がん以外でも、根治を目指せる方法が見つかってくるかもしれません(もしかしたら、もう既に、どなたかが見つけておらるかもしれません)。