高校2年 9月 中旬


体育祭も終わり、また平穏は日々が続いていた。
が、私はまた忙しくなっていった。
例のスピーチの件、引き受けたからだ。

部活にもなかなか顔を出せず、同じパートの広子に頼りきっていた。
広子もなんでも相談できる友人。
 
広子「最近新藤と仲いいね~♪」
私 「あぁ、まあね。ってか広子って新藤に名前で呼ばれてるっけ?」
広子「ん?ああ、そうだね。広子って呼ばれる。なんで?」
私 「私いまだに雨宮なんだよね。私くらいだよ、名字で呼ばれる女子。笑」
広子「たしかにそうかも。そんなこと気にしてたんだ。笑」
私 「ん?あ、いや、ただちょっとそう思っただけ!」

危ない。ばれる。
こんな気持ち誰にも言えないよ。

次の日、掃除をやってるところに新藤が来た。
私は広子と同じ掃除場所だったのでずっとしゃべっていた。
すると広子が突然

広子「新藤先生~~なんかゆうも先生に名前で呼ばれたいって~!!」
私 (ばっ!ばか広子!!!!)
新藤「んぁ?あぁ、お前ゆうだっけな。なんかそういう感じじゃねーんだもん。」
私 「何それ。。私だけ名字でしょ~?だからそう思っただけ!」
新藤「まぁ気が向いたらな。笑」

・・・やられた。またあの笑顔に。
絶対雨宮で通すんだろうけど。


次の日の新藤の授業で私は当てられた。
新藤「んじゃあ次はー・・あ、ゆう。答えて。」
私 「・・・はい。笑」

今、雨宮って言おうとしたけど、ゆうって言い直した。
しかも全くこっちを見ずに。
照れくさかったのかな。笑
嬉しすぎた。意識してくれたんだ。

まあ、気を抜くと雨宮と呼んでしまうのは言うまでもない。


それからさらに私の新藤に対する気持ちは
どんどん膨らんで行った。
外はだんだん冷たい空気が流れ出す9月の中旬。

高校2年 9月

あっという間に夏休みが終わり、新学期が始まった。
英語の強化合宿もあっという間に終わった。
強化合宿というカタい名目だったが、合宿自体はとても楽しかった。
そんな余韻に浸りながら、また新学期だ。

新藤「雨宮!」
私 「はい??」

(遅ればせながら紹介ですが、私の名前は雨宮ゆうです。)

久しぶりの学校で新藤に呼ばれた。
・・・そう。
あの日からちょっとだけ意識してしまっている。

私 「久しぶりですね先生。どうしましたか?」
新藤「お前合宿どうだった?力ついたか?」
私 「力ついたかわかんないけど、とにかく楽しかった!またがんばりますよ英語。」
新藤「ほぉ。行った甲斐があったな。」

そういうと新藤が不敵な笑みを浮かべた。

私 「何ニヤついてんの?笑」
新藤「あのさ、英語のスピーチ出ない?大会があるんだけど。」
私 「は?やです。」
新藤「いや、やだとかじゃなくて、強制だから。」
私 「・・・。うそやん。」
新藤「色々アイディア考えといて!体育祭終わったら本格的にやるぞ!じゃっ」

私 「・・・じゃっ!じゃねえよ・・・。」

でも、これをやればまた一緒にいる時間が長くなる。
・・・やってみようかな。

っていうか、私いまだに雨宮だ。
みんな名前で呼ばれてるのに。
なんだか寂しい気分になった。

暑さが残る新学期
また新藤の笑顔に私の想いはかき乱されて行く。
高校2年 8月

1学期は終了したものの
私は進学クラスだったので
毎日夏休みの特編授業があった。

英語の強化合宿ももうすぐ始まる。
事前に課されていた課題もやらなければならなかった。
授業の合間の休み時間を使って課題もやりつつ
新しく部活の部長になった私は、悩んでいた。

すると、また授業後に新藤が私の元にやってきた。

新藤「課題あるだろ?1人じゃ大変だろうから今日の放課後一緒にやんぞ。」
私 「え、でも先生部活あるでしょ?いいですよ、1人でやるから。」
新藤「ん?まぁ気にすんな。5時に教室な。」
私 「・・・なんかすいません。ありがとうございます。」
新藤「笑」

特編授業は午前中で終わり、午後から部活。
私は時計ばかり気にしていた。

今考えると、、
2人きりに慣れることが嬉しかった。

5時になる10分前くらいに音楽室を出て
教室へ向かった。
電気がついていたから”もう来てる”とわかった。

走ったから呼吸が荒れていた。
いや、先生と2人になることの緊張かもしれない。
乱れた呼吸を整えて涼しい顔で入って行った。

新藤「よ!お疲れさん。お前部長になったって?」
私 「お疲れさまです。そうなんですよ~色々大変ですよ・・・。」
新藤「人数多いからな~。まぁお前なら大丈夫だから。頑張れよ!」
私 「うぃーー。」

新藤は今日はジャージ姿。
そうそう、彼は女子バスケ部の顧問。
私は中学でバスケ部だった。
その過去を知った新藤は何度も
バスケ部へ勧誘してきた。
それももちろん冗談で。

新藤「さてやるか~。」

新藤は私がやってきた課題を真剣に読んでいた。
新藤「・・・。うん。がんばってんじゃん。でもここのwant toはhopeに変えようか。」
私 「ほーい。あとは?」
新藤「ん~。まぁお前の言葉で書いてるから極力変えたくないしな。いいよ。」
私 「早(笑)ありがとうございます。」

英語の課題の添削は
案外あっさりと終わった。

新藤「お前ってまじめだよな~」
私 「それ嫌味ですか?」
新藤「なんでだよ(笑)なんていうか、ブレないっていうか流されない。
   なかなかいないよな。この学年でお前みたいな奴。」
私 「冷めてるんですかね(笑)」
新藤「まぁテンション高いとこは見たことないな(笑)でも、
   吹奏楽部の部長は、お前だからできるんじゃないか?
   それに、お前本当に英語好きなんだな。授業してたらわかる。
   新人の俺の授業つまんないだろ?でもまじめに聞いてくれてる。
   小テストもよくがんばってる。ありがとな。」

びっくりした。
そんなに真面目だった?
っていうか、新藤そんなに見てたの?

ただ単に、私は英語が好き。
それは担当が新藤じゃなくても変わらない。
だけど、そんなに集中してたんだ、私。
たしかに新藤がやる授業は50分あっという間。

お礼を言われることなんてやってないのに。
そんな風に私を見てくれてることに対して
私がありがとうと言いたくなった。

新藤「ま!お前の英語力もまだまだだけどな!
   俺が鍛えてやるから覚悟しとけ!!」
私 「・・・はーい。」

ニカっとして手を振りながら
新藤は職員室へ戻って行った。


やっぱり、胸がざわついてる。
ただの憧れじゃ・・・ない・・?

いつもと違う感情に戸惑いながら
家までの道を歩いた。