喜寿の7月 | はったブログ

喜寿の7月

 

 7月7日にイギリスのジョンソン首相が辞職する意向を表明した。その理由は閣僚を含め次々と周囲の重職スタッフが辞職を表明する事態が続いたためらしい。辞職は彼に信頼が置けないという理由という。昨年末、コロナの感染拡大中に、国民には自粛を呼びかけていたにもかかわらず自分の誕生日パーティーを官邸内で実施し、そのことについて、後日ミステイクであったと謝罪をしたものの、嘘をついたこと、そして周辺人物のスキャンダルを覆い隠そうとするような言質があった、その二つが理由であるという。

首相であっても、ともかく嘘を言う人は認められない、ついて行けないというのが、次々と辞任して行く理由であると言うのだ。嘘を言うことは、人間として許せない、信用できないという強い倫理下でのスタッフの行動で、イギリスの政治家や官僚たちの倫理観の高さに、さすが憲政の母国と改めて感心した。

 その時に、つい連想したのは数年来の安倍元首相周辺の官僚や政治家のことで、彼が明らかに嘘をついていると知りつつも、それを覆い隠し、地位に連綿とするのが官僚や政治家の一般的特性と思っていたのが間違いであることを知った。あえて声高に言うと、イギリスに比べての日本の官僚や政治家たちの倫理感の低さが嘆かわしい!

 

 こんな安倍元首相に関わる過去を想起していた頃(7月8日)に、奈良で彼が若者に銃撃され、死亡したという緊急ニュースに接した。当初言われたような政治的な意見の相違による、いわゆる政治テロではなかったようだ。銃撃をした若者は自分で銃を作り、安倍さんはシンパと信じ込んでいる旧統一教会に家庭を崩壊させられた、怨恨理由によるものらしい。自分に票をくれる者については誰であってもどんな背景を持つ人であっても構わないというような振る舞いをする政治家の、ある意味で宿命的な悲劇と言わざるを得まい。

 

 さて、この7月で元気に喜寿の誕生日を迎えた。一向に日本の社会が豊かで健全な国に育っているという感覚を持てずにいる。むしろ、自分のことにだけ関心を持ち、自分の経済的な豊かさだけを追求したり、嘆いたりすることに終始したりすることばかりが増えているように思う。7月10日に参議院選挙があったが、社会問題に直接的・根本的に対峙しようとする投票行動はいっこうに伸長せず、投票率も低く相変わらずで、自民党が大量に得票した。無力感だけが残ったままである。

 

 今の僕の関心に夏野菜がある。カボチャを作ってみた。2本の苗を買って、1本は昨年までゴーヤを育てていた場所に植えた。土地は痩せている。以前はどうしようと言うくらい採れたゴーヤもここ数年収穫が激減していたし、ゴーヤチャンプルー料理も食傷気味なので、今年は育てるのをやめにした。別の1本は畑の端っこに植えて、塀に沿わせようとした。畑のカボチャは順調に育ち、野放図にみるみる蔓を伸ばし、一方の先端を止めたが、逆方向に伸びて手が届かない。月桂樹の木を覆い尽すまでになった。YouTube由来の知識で、受粉をしないとカボチャはならないと、その日を待っていたが、雌花と雄花とが同時に咲くと言う機会は極めて少ないことを知った(何本も苗を育てている場合には問題はないのだろうけど)。

 雌花が咲いている朝に雄花は開花せず、雄花が数多く咲いているのに雌花はないという状況が連日続くのだ。不十分な開花レベルで、トライした受粉は結局ほとんど成功せずじまいだ。雄花と雌花が時を同じく開花しないとダメということは、若者の結婚事情にも似ていると思ったことである。しかし、畑の苗からは一個のカボチャが赤ん坊の頭大に育ち、茎のコルク化も進み近日中に収穫できそうである。痩せ地の一本は頼りなげにゴーヤ用のネットを伝って成長中である。この蔓も僕が半ば強引に受粉させた雌花は成功せず、知らないうちにテニスボール大のカボチャができている。

 豊かな土地であればカボチャは実るというわけでもなく、豊かでない環境でもきちんと育つことがあるということだ。初めてのカボチャ栽培からの教訓である。先月末の猛暑で動きの悪かった蜂たちの活動が、7月に入ってようやくが活気を帯びてきたおかげだろうが、一人でに痩せ地のカボチャは受粉したようである。自然界というのは不思議なものである。

 

 僕自身はカボチャが好物というわけではないが、家内は時々かぼちゃを購入したりするので、今年の夏の野菜栽培はまあまあ合格と評価してもらえそうである(将来の食糧難の場合に備えても、カボチャ栽培技術をマスターしておかねばならない)。2本しかないキューリは今年も順調で、現在までに約80本を収穫し、キューリ料理のレパートリーはそんなにないと言うので、職場に配達する日が続いている。セロリも順調であるし、パプリカも順調だ。パプリカは黄色や赤にするまでには40-60日かかると言うので、観察中。ミントも大きく育ったので、ラム酒を買いに行って、ヘミングウェイが愛したというカクテル「モヒート」を楽しんでいる。暑い日にはジントニックよりも旨く感じられる。

 

 このように、古希の誕生日を猫の額ほどの菜園を相手にカボチャの生育を見守りつつ元気に過ごせている毎日を、有難いと思っておりまする。