彼岸花は何処へ | はったブログ

彼岸花は何処へ

 40度を越すような酷暑の夏であったが、確実に秋は訪れ、いつの間にか気温は平年並みとなった。コロナ禍はメディア報道が激減したせいで一段落しているかのような状況にある。日常生活状況はgo-toとかgo-eatとかの経済活性化策の動きはあるものの、大した変化があるような気にはなれない。相変わらず、マスク姿で人は行き交っている。

 

 夏休み明けから9月いっぱいにかけて秋学期をどう進めるかにエネルギーを費やした(消耗した?)。

結論として、感染対策の消毒やマスク着用を学生に義務付けた上で、10時始業、60分の対面授業プラス30分に相当する課題提出(遠隔での)を基本とすること、1.5m間隔の座席配置(着席記録提出)とすることなどを決めた。当然100名以上規模の授業クラスは教室に収まらないので、そういう場合は登録学生を2分し、隔週登校で対面授業(半数は動画配信される授業を遠隔で聴取)とするアイデアを捻り出した。この方式を導入するために、機材の購入、動画配信が不得手の教員には複数の研修会を実施し、加えて初めの3回程度は教務職員や情報センター員のサポートをつけるなどの配慮も決めた。この方式であれば、最大限に対面授業を増やせると考えるためである。しかし、3,000弱の授業コマがあり、履修登録(修正期間の担保)をみての教室配分の見直しなどの作業量は膨大であった。対面授業再開をせわしく迫ったり、10月から食堂を外部開放するなどと言い出したりと学園本部上層部の想像力の乏しさに、(温厚な私が:異論があるかも知れないけど)怒鳴りつけることもあった。教職員の協力でやっとこの新体制ができたのはありがたいことである。その他にも学生や同居家族に陽性者が見つかった場合のその後の授業体制のシミュレーションやガイドラインづくりも大変な作業であった。秋学期は始まって2週間が経過したが、本格的な授業は1週間後なので、何とか準備はできているような気がしているが、予想できないこともありうる覚悟している。

と言うように、遠隔授業が多い、レポートが大変と言う学生も気の毒ではあるが、教職員も通年にはない様々な負担を課せられて大変のである。それを粛々とこなしてくれていることに頭が下がる。

 

 過去8週間ほどのこれら作業で厄介だったのは、教員の間のITリテラシーのばらつきである。学生の学力のバラツキよりもはるかに大きな教員の能力(+動機づけ)のバラツキである。春学期では渋々あるいはサボりが見られたような情報を得ていたが、流石にもう聞くことが無くなく、リテラシーを獲得してくれたようである。

 

 このように忙しくて、秋の始まりを明確に意識する間もなく、季節感を意識せずにいる妙な気分の日が続いていた。何かしら変な感じだとモヤモヤする思いであった。昨日やっと思い当たる理由らしきものが見つかった。

 

 朝の散歩は続けているのだが、彼岸花を目にしていないに気づいたのだ。もう40年以上、ゴルフ場につづく府道に並行する集落近辺の車のあまり通らない道を毎朝往復2km(20-30分)歩いている。自宅を出て右手に行くと途中には道沿の水路、田圃と畦道、小さな野菜畑、後ろに里山があり、それを眺めて、季節の移り変わりを知るのだ。畑を覗いてはもうそろそろ植える苗を買わねばとか、新野菜に挑んでみるかと考えてみたり、追肥の様子や自分の作る野菜の生育具合と比較してみたりするのである。

 

 3年前に新名神の高槻ICができて、散歩道の両側の田圃や畑は埋め立てが始まっていた。道沿いの民家も立ち退きとなって取り壊され、本格的に整地され始めたのが今年の春からで、8月には水路、田圃、水路沿いの緑がすっかり姿を消した。田んぼの畔沿いに彼岸の頃には間違いなく咲く、赤い花の列がこの秋には消失してしまっていたのである。

今年畔沿いに咲き誇る赤い彼岸花を見ることがないことが、モヤモヤ感の正体に違いないと了解したのである。

 

 自宅から墓地公園の手前までの散歩コースは、距離は適切であるのと車が通らない、加えて道端の田んぼや畑、畦道の野草を愛でることに季節を味わうことから構成されていたことがよく分かった。50年前に山を切り開いた分譲地に移ってきた頃、緑に溢れていた周辺は住宅だらけとなり、子どもがザリガニとりに夢中であった田んぼの側溝も姿を消してしまうことになった。インターチェンジができて便利にはなったが自然を犠牲にする市街化の証人としては、気持ちは複雑である。

幸い、それでもまだ周辺に緑の自然は皆無ではない。自宅から左手に進路を取れば、田圃道で散歩に適した散歩ルートがありそうなので、距離と時間を計測し、新たなルーチンを決めねばなるまい。

 

 高槻I C近辺の埋立地は、流通ターミナルや工場が予定されているらしい。計画地図によれば、広大な埋立地の自宅に近いあたりにスーパーマーケットも予定されている。徒歩5分で冷えたビールが買えるとすると、彼岸花が消えたことの残念さは軽減できるかもと罰当たりなことを考えてしまうのでありまする。