高級ティッシュの世界 これで鼻をかめますか? 1箱千円! | thankyou parsley

産経新聞 5/4(木) 16:13配信

 

 

 

 

 世界的に見ても高品質なのに安価とされる日本のティッシュペーパー。量販店では5つパックが200~300円ほどで売られているものもあるが、その逆を行く高価な製品が密かに売れている。もったいなくて、値段を聞くだけで鼻水も止まる? 

■十二単の雅は企業の贈答用に

 大昭和紙工産業(東京都中央区)の「十二単(じゅうにひとえ)」の値段は驚きの1箱1万円(税込み)! インターネット通販のみで販売している。1箱288枚で、2枚1組。ゆえに、1組は約70円。2014年に販売を始めると交流サイト(SNS)などで話題になり、月に80箱前後が売れているという。企業や商店などが贈答用に買い求めるケースが目立つ。

 紙は12色に染められていて、「蘇芳(すおう)」「常磐緑(ときわみどり)」「わすれな草」など、みやびやかで印象的な名をもつこれらの色はかつて十二単に用いられたという。箱は特別な厚紙でできており、風呂敷で包んで販売する。

 漆器の美しさを意識して紙を深みのある赤と黒に染色して4枚重ねにした、ティッシュの常識を覆す「漆」(1620円、税込み)も人気。

 企画デザイン室の冨樫圭司係長は「大人の雰囲気なのでお酒を出す店、たとえばホストクラブでホストがお客さんにサッと差し出したりしたら面白いでしょうね」とユニークな利用シーンを想定する。

 紙袋やパッケージ用の紙、産業資材などを得意とする同社が、消費者向けにも会社の名前を知らせ、技術力もアピールしようと開発したのが、こうした高級ティッシュなのだという。 十二単の開発には1年もの時間をかけた。冨樫係長は「12色あるので、その日の気分でポケットチーフとして使えます」とも。

■成田では訪日客にも人気

 

 


 日本製紙クレシア(東京千代田区)は、1997年から高級ティッシュ「至高」シリーズを販売している。最初に売り出した「クリネックス至高」は1箱540円。「ティッシュの本当の良さを追求する」がコンセプトで、薄くて柔らかい紙を、通常の2枚重ねではなく3枚重ねにした。材料の配合を変えるなどして肌触りを良くし、箱に印刷した「至高」の文字は、書道家の武田双雲氏に依頼するなど、細部にまでこだわりが詰まっている。

 至高シリーズは進化を続け、昨年4月には至高「極(きわみ)」を発売。針葉樹パルプと広葉樹パルプを絶妙な比率で使用し、薄い紙を4枚重ねることでさらに柔らかな使い心地にした。1つ1つ人の目でチェックし、合格したものを出荷している。

 1箱1080円(同)だが、毎月2千~3千箱も売れるという。ネット通販のほか一部小売店、さらに成田空港でも販売しており、訪日外国人観光客の購入も多いという。同社営業推進本部の高津尚子部長代理は「2020年の東京五輪を見据え、日本のティッシュは世界一であることをアピールしたい」と力を込める。

■保湿成分たっぷり

 


 王子ネピア(東京都中央区)の「鼻セレブ」は肌に優しい保湿ティッシュ。オープン価格で、店頭では200~300円で販売されている。独自の保湿成分を含んでおり、花粉症で何度も鼻をかむ人や肌が敏感な人に好評だ。同社によると、売り上げはここ10年で8倍に伸びたという。

 15年秋には、紙を3枚重ねにした保湿ティッシュ「大人の鼻セレブ」を発売、こちらの店頭価格は500円前後だ。担当者は「春先の花粉がたくさん飛ぶ季節によく売れます」と話す。同社の調査によると、鼻をかむのには鼻セレブを使い、そのほかのティッシュが必要な場面では普通の商品を、という使い分けをするケースが多いという。

 1964年に初めて販売された日本のティッシュは半世紀以上の月日を経て、さまざまに進化している。値段だけでなく、品質やデザインなど、ティッシュの“個性”も確かめて、賢く使い分けてはいかが。(文化部 櫛田寿宏)