事件は現場で起こってるのである。


院生の時、先生の研究にくっついて、タイに住む少数民族を訪ねた。

山の中で暮らしている彼らの調査をするには、

当然こちらも、山の中で生活することになる。

それでも、上のような、屋根とベッドがある部屋に寝泊まりさせてもらっていた。


風呂はない。

雨水をためて、それで体を洗う。


学生時代、何もない野っぱらを開拓し、

テントをはって暮らしたりしたこともあった。

なんか背中がかゆいと思ったら、

どでかいムカデが入ってたなんてこともあった。

でも、その瞬間はビビっても、

まあ、こんなもんでしょくらいの心意気があった。


今それを考えれば、

あの状況は、まだ恵まれていたはずである。


しかし、それなりに歳をとり、無茶苦茶することもなくなっていた。

それにつれて、虫がだんだん怖くなってきていた。


だからかしら、

穴だらけの蚊帳を、自らぬかりなく修復し、

ベッドもちゃんとある部屋なのにも関わらず、

いつなんどき虫が襲ってくるやもしれぬという

よく分からない恐怖にさいなまれる日々が続いた。


そんなある日、事件は起きた。

夜、夕飯を終え、自分の部屋のドアを開けた。

何気なく下を見ると、

床に線がひかれていた。

さっきはなかったのに。。。


はたして、ご期待通り、それはアリであった。

ants の行列である。

ぎょっとして、入口からたどってゆくと、

なんと antsたちは、ベッドの木の穴に入ってゆくではないか。


正直、泣きそうだった。というか、泣いた(と思う。。。)

行列があるだけなら、一万歩譲って、まだいい。

それが、これから自分が一夜を過ごす寝床へとつながっているのである。


そんなこと、誰も想像だにしていない。

撃退するためのグッズなんて、何ももってはいない。


先生が、ハンディタイプの虫よけを貸してくださった。

その温かいお心づかいに、また泣けてきた。

それを、行列に向かって、

ぬかりなく、

かなりの至近距離から、

かなりの量を、

噴射さしてもらった。


翌日、

近くにすむ女の子にこの話をした。

「そんなの、水で流しちゃえば終わりだよ。」

彼女はそういってのけたらしい。

(らしいというのは、私は全く言葉が通じなかったので。。。)


「水で流せば終わり」

今、この言葉の意味が本当によくわかる。

さすがに机の上や寝床はそうはいかないが、

風呂場やベランダに、アリが群れていたら、

水で流せばそれで万事OKだ。


というか、

最近、アリがいっぱいいても、

まあ、いいかくらいの気持ちになってきている。

だって、

どうせまたどっかから沢山現れるから。