現在、ベトナムの製鉄会社は政府の景気刺激策と鉄価格の上昇で大幅な利益を享受しています。
ベトナム製鉄業協会(VSA)によると、VSA会員企業の7~8月売上高は前年同期比で22.59%増となったとのことです。VSAによる年初時点での会員企業09年売上高増加率予想は5%に過ぎなかったのですが、現在、同売上高増加率を20%程度に上方修正したそうです。
そうしたなか、スチール関連部門の売上高が総売上高の65%を占めるホアファットグループ(HPG)のハノイ本店を訪問してみました。
ハノイのホアファットグループ本店の受付の写真。カメラを向けると照れてしまったみたいだ。ベトナム女性は日本女性と違って素朴なのかもしれない。
ホアファットグループはホーチミン証券取引所上場で、子会社10社、合弁会社4社を抱える製鉄業を核とする企業グループです。売上高ベースでスチール部門が65%を占め、営業利益率も同部門が最も高くなっています。したがって、鉄市況が同社の収益に大きく影響してきます。日本で言えば、電炉メーカー、例えば、「東京製鐵」や「大和工業」といったところか。いずれにしても景気の波の影響を大きく受ける「市況株」、「景気循環株」といったところでしょう。
同社の鉄製品の国内シェアは8%で、競争相手は国営企業2社(市場シェア25%)、ポンミナ(未上場、同15%)、キューエイ(未上場、9.5%)などです。
IR(インベスターリレーション)担当者によると、10月からハイズオン(ハノイ北120キロ)で最新鋭のコークス炉(設備投資額1億4000万ドル、年産35万トン)が稼動し、海外からの引き合いも多いとのことでした。
IR担当の女性3名に親切に応対していただいた。率直に言って、ベトナム企業のIRは日本やタイの企業に比べると遅れている。70年代(?)の日本のような感じか。しかし、今後の市場の成長につれてIRも国際標準に近づいていくと思われる。
09年初から9月末までの9ヶ月間の売上高は5兆8220億ドン(年間目標値の82%)で税引き前利益は1兆480億ドン(年間目標値の114%)を達成しました。また、第3四半期のみの売上高、税引き前利益はそれぞれ2兆1470億ドン(前年比30%増)、3590億ドン(同50%増)でした。また、2009年通期の計画を上方修正し、売上高を6兆3,720億ドンから7兆ドン、税引後利益を5,850億ドンから9,200億ドン、配当金を額面の20%から30%に変更しました。ベトナムでは現在次々に景気回復を示す指標が報道され急速に景気が回復しつつあります。
IR担当者は、中長期成長率としてEPS目標成長率年20%を目標にしているとおっしゃっていました。
参考までに、本日のHPGの株価は1500ドン高で7万6500ドン。本日の円/ドン相場は1万ドン当たり50.77円なので、7万6500ドンは388.39円になります(ホーチミン市場の単位株は10株になります)。
ホアファットグループ(黒線)とホーチミン市場の代表的な株価指数であるVN指数(赤線)の株価を指数化して比較したチャート。今年前半に底を付けた後、急騰に転じている。また、同社株の株価はほぼVN指数に連動した動きをみせている。但し、業績の好調からVN指数の動きを上回っている。ベトナムでは同社は大型優良の代表的ブルーチップ。データ出所はホーチミン証券取引所。