民主市民連合(PAD)が国会議事堂を包囲 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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 24日午前、反政府組織「民主市民連合(PAD)」は、憲法改正審議を行わせないために国会議事堂を包囲しました。このため、チャイ下院議長は審議中止を決定。また同日PADは、ドンムアン空港の臨時政府庁舎前でも閣議中止を求めて抗議集会を行いました。さらにPAD支持のタイ発電公社労組は財務省の電源を切るなどして、政府業務を妨害しました。本日(25日)もPADの反政府活動は続きそうです。

 もしこれが日本なら、PADのデモは「公安条例」によってたちまち規制がかかるでしょう。日本では、日本国憲法21条「表現の自由」で原則として「デモ行進の権利」は認められています。しかし、それも「公共の福祉」の内在的制約(多数説)のなかでのものです。自由を無制限に認めれば収拾が付かなくなるからです。

 かといって、日本では無制限にデモ行進が制限されているのではありません。「デモ行進の自由」への制限は、憲法21条の趣旨を考慮し、必要最小限な制限である必要があります。具体的には、デモを実施する「時」「場所」「方法」などを所轄警察署などに事前届出すれば原則として認められます。日本なら、財務省の電源を切るなどの行為は「公務執行妨害」か「威力業務妨害」に当るのではないでしょうか。とはいえ不勉強なためタイの現行憲法や公安条例ではどうなっているのかは知りませんから、詳しい方はお教えいただければ幸いです。

 ともあれ、タイの現政府はPADに対して全く無力なのです。現在タイの現政府が頼りにしているのは「世論」のみ。

 ところで、明治憲法下でロンドン海軍軍縮条約に絡んで「天皇統帥権干犯問題」という事件がありました。この問題を引き起こした明治憲法上の不備が影響して日華事変後に日本国は「東京政府」と「関東軍(満州政府)」の2政府状態に陥り、国際的信用は失墜しました。「東京政府」が「中国への軍事進出は中止する」と声明を出しても、「関東軍(満州政府)」は無視し続けたからです。当時、明治憲法の解釈を厳格にすると「関東軍(満州政府)」をコントロールする権限があるのは「天皇陛下だけ」という理論的背景が関東軍にはあったのです。

 現在の反政府運動によるタイの混乱は、タイ国王ならすぐに収拾できるでしょう。いずれにしても、歴史的に外交上手で知られるタイ上層部。米国経済誌『フォーブス』によるとタイ王室の推定純資産は350億ドルで2008年「世界で一番裕福な王族」に選出されています。