宇宙(87) 遺伝子あれこれ(5) | thackeryのブログ

宇宙(87) 遺伝子あれこれ(5)

遺伝と言えば「メンデルの法則」。 だがヒトの遺伝はもう少し複雑だ。
 - 数多くの遺伝子がかかわる「多因子遺伝子」とは何か。


遺伝と聞いて、 真っ先に思い出すのはメンデルの名前である。 19世紀のオーストリアの修道士、 グレゴール・メンデル(1822~1884)。 19世紀のヨーロッパでは、 農業や園芸のための品種改良が盛んだった。 メンデルは、 より良い品質改良のテクニックを得るためにエンドウマメの交配実験を行い、 親から子へと伝わる「何か」があることを突き止めた。 メンデルはその何かを「要素(element)」と呼んだが、 これが今でいう「遺伝子(gene)」である。 尚、 遺伝子という呼び名は、 デンマークの遺伝学者ウィルヘルム・ヨハンセン(1857~1927)が1909年に提案したものである。 メンデルは1866年までに、 親の特徴が子に遺伝するときの法則を三つ見つけた。 「優性の法則」「分離の法則」「独立の法則」であり、 これらをまとめてメンデルの法則と言う。 


血液型の遺伝は、 ヒトの遺伝にメンデルの法則が当てはまる典型的な例である。 だが、 ヒトの遺伝は、 メンデルの法則で単純に説明できるものばかりではない。 例えば、 身長の遺伝がそうである。 身長の高さは一卵性双生児の間でほとんど一致することから、 遺伝子の影響が強いことがわかる。 しかし、 たった1個の「身長を高める遺伝子」があり、 その有無だけで身長の高さが決まるわけではない。 実際には、 身長に関わる遺伝子は数十個から数百個ほど存在すると考えられており、 それらが持つ小さな効果の重ね合わせによって身長の高さは左右される。 このような遺伝は「多因子遺伝」と呼ばれている。 身長だけでなく、 病気になりやすい体質や性格等、 ヒトの個人差にまつわる遺伝の多くは多因子遺伝の例である。


遺伝の基礎 - メンデルの法則
オーストラリアの修道士だったメンデルは、 種屋で買ったエンドウの種子を修道院の庭に蒔いて交配実験を繰り返し、 優性の法則(1)、 分離の法則(2)、 独立の法則(3)を突き止めた。 メンデルはこれらをまとめた論文を1866年に発表したが、 当時の学者にはその価値がわからず、 ほとんど無視された。 メンデルは「私の時代がきっと来る。」という言葉を残して1884に世を去った。 その16年後の1900年に、 同じ法則が3人の学者によって改めて発見され、 メンデルの法則は遺伝学の基礎として広く認められることになった。 また品種改良や遺伝子組み換え技術等の基礎として、 メンデルの法則は広く今日の社会を支えている。


(1)優性の法則
メンデルは、 豆の色が黄の純系(遺伝子型AA)と緑の純系(aa)を交配してできる子世代のエンドウ(Aa)には、 常に黄の性質が現れ、 緑の性質は現れないことを発見した。 これを優性の法則といい、 黄を優性形質、 緑を劣性形質という。


(2)分離の法則
Aaのエンドウから配偶子(花粉及び卵細胞)ができるとき、 Aとaは分かれて、 別々の配偶子に入る。 これを分離の法則という。 分離の法則がはたらく結果、 Aa(黄)同士の子は、 黄と緑が3:1の比に分かれる。


(3)独立の法則
豆の形には丸(優性形質)しわ(劣性形質)がある。 メンデルは「豆の色の遺伝」と「豆の形の遺伝」には、 優性の法則と分離の法則がそれぞれ独立にはたらくことを発見した。 このように、複数の種類の形質が独立して遺伝することを「独立の法則」という。
→ 独立の法則がはたらく結果、 AaBbのエンドウ(黄・丸)同士の子は、 黄・丸と緑・丸黄・しわと緑・しわ9:3:3:1の比に分かれる。


多因子遺伝のしくみ
身長の遺伝は「多因子遺伝」の例である。 ここでは身長の程度が「身長を高める遺伝子」の個数で決まる(不完全優性)と仮定する。 身長を高める遺伝子4個を持つ父親と2個持つ母親がおり、 それらの遺伝子が3ペア(計6本)の染色体上に配置しているとする。 この父母の子は、 遺伝子を2~4個持つ確率が高くなり(合計87.5%)、 両親と似た長身の子が生まれやすい。 一方、 1個や5個の子もそれぞれ6.25%の確率で生まれる。


遺伝子の個数で赤さが決まる - アサガオの色の遺伝
アサガオの花の色を決める遺伝子にR(赤)とr(白)がある。 その両方を持つ(Rr)とき、 花の色は赤と白の中間(ピンク)になる。 これは、 赤と白の優劣関係が完全ではないために起きる現象であり、 これを「不完全優性」という。 このとき、 アサガオの色はRの有無ではなく個数で決まる


― - - つづく