宇宙(75) 原子の正体(9)
水素には、 軽い水素と重い水素があるのか。
チャドウィックによって、 原子核は陽子と中性子でできていることがわかった。 陽子の数によって原子の種類(元素)が決まり、 中性子の数は原子の重さに影響する。 陽子と中性子の数の合計を「質量数」といい、 その原子の大体の重さをあらわす。 陽子の数は元素ごとに異なっているが、 中性子の数はそうとは限らない。 例えば水素の場合、 陽子は1個と決まっているが、 中性子は0個と1個と2個の3種類がある。 同じ水素でも、 軽い水素と重い水素がある。 このように、 「原子番号が同じで、 つまり陽子の数が同じで、 中性子の数が異なるものが全ての元素で見つかっている。 そのようなものを『同位体』という。」
同位体を発見したのはイギリスの物理化学者フレデリック・ソディ(1877~1956)である。 ソディは1910年頃、 化学的な性質は同じなのに、 放出する放射線の特徴に違いを持つ原子のグループがあることに気がついた。 ソディが調べた原子のように、 同位体の中に放射線を出すものがある。 例えば中性子の数が2個の水素原子は、 ベータ線という放射線を出すことで中性子1個が陽子に変化し、 別の原子核(ヘリウム3)になる。 このような同位体を放射性同位体という。 尚、 同位体は「原子量」にも影響する。 原子量とは、 質量数12の炭素の重さを12としたときの、 各原子の相対的な重さである。 そして全ての元素の原子量は、 整数ではない半端な数になる。 それは、 同位体の存在比をふまえて計算されるからである。 例えば、 炭素には質量数13の同位体が全体の1.1%の比率で存在している。 そのため炭素の原子量は、 12に極めて近いが、 12.0107となる。 酸素の場合は、 質量数16(99.8%)と17(0.04%)と18(0.2%)のものが存在し、 原子量は15.9994となる。
●中性子を持たない水素原子
原子核が陽子1個であり、 中性子を持たない水素原子は「水素1」である。 天然に存在する水素原子の99.9%以上を占めるのが、 この水素1である。
●中性子1個の水素原子
中性子を2個持つ水素原子は「水素2」である。 「重水素」と呼ばれる。 水素全体の0.01%を占めている。 尚、 人工的には中性子の数が6個の七重水素まで合成できることが確認されている。 しかし、 いずれもすぐに崩壊してしまう。
●中性子2個の水素原子
中性子を2個持つ水素原子は「水素3」である。 三重水素、 或いはトリチウムという。 三重水素は放射性同位体であり、 ベータ線(正体は電子)という放射線を出してヘリウム3に変わる。 これによって、 中性子一つが陽子に変り、 そのため原子番号が一つ増えて水素からヘリウムになる。 三重水素は天然で作られるため、 なくなってしまうことはない。
●同位対比の違いで産地同定
放射線を出さない同位体(安定同位体)は、 普通に存在している。 例えば水素1(軽い水素)と水素2(重い水素)は、 それぞれ主に水分子の一部として存在している。 そしてその割合は、 場所によって異なる。 生物は体内にその場所の水を取り込むため、 体内にある軽い水素と重い水素の割合を調べることで、 生物の産地を明らかにすることができる。 尚、 水分子には酸素原子も含まれているため、 通常は水素と合わせて酸素の同位体比も調べられる。
●放射性同位体で癌検査
癌患部に集まりやすい薬品に放射性同位体をくっつけておき、 経口薬や注射で体内に入れる。 その後、 放射線を写す特殊な機器で体内を撮影すると、 癌の位置や大きさが明らかになる。
●放射性同位体で年代測定
放射性同位体は、 放射線を出して別の元素に変化する。 このとき、 もともとの同位体の量が半分に減る時間(半減期)は、 同位体ごとに決まっている。 例えば炭素14という放射性同位体は窒素14に変化するが、 その半減期は5730年である。 この性質を利用して、 炭素14は地球科学での年代測定に利用されている。 環境中にある炭素14の量は一定である。 また生物は、 体内に炭素を取り込む一方で排出し、 常に入れ替えている。 そのため常に一定量の炭素14が体内に存在することになる。 生物が死ぬと、 体内の炭素14は出入りがなくなり、 窒素14に変化していくだけになる。 発掘された貝殻や木の実、 遺骸等に炭素14が何%残っているかを調べることで、 その生物が何年前に死んだのかを推定することができる。
― - - つづく