FLICKS FREAK -26ページ目

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

カフェ店長のカトウは仕事を終えて、同じビルの2階の自分のアパートに戻り、ギターを弾こうとしてピックを探していた。すると「おい」と呼びかける声がする。テレビには自分の姿が映り「俺は2分後の俺なんだって」と言い、ピックの場所を教えてくれた。どうやらカフェのテレビと自分の部屋のテレビが2分間の時差でつながっているらしい。そのことを知ったカフェの仲間はもっと先の未来を知ろうと躍起になるが、物事は意外な展開に。

 

劇団「ヨーロッパ企画」による劇団初のオリジナル長編映画。劇団代表上田誠が原案・脚本、劇団の映像ディレクターの山口淳太が監督を務める。

 

2分後の未来しか分からない「タイムTV」を利用して、もっと先の未来を知るために映画内で使われるのが「ドロステ効果」。ドロステ効果とは、1枚の画像の中にそれと全く同じ小さな画像が含まれ、それが再帰的に無限に繰り返される視覚効果のこと。言葉で説明すると難しいが、合わせ鏡をイメージすると分かるかもしれない。ビデオカメラで撮影したものをモニターに出力し、そのモニターに映った映像を再びカメラで撮影すると生じるビデオ・フィードバックも同じ原理。クイーンの『ボヘミアン・ラプソディー』のPVを思い出してもらえるといいだろう。タイトルの「ドロステ」はそこから取られている(「ドロステ」の語源は、20世紀初頭にオランダで発売されたドロステ効果をイメージさせるパッケージデザインの「ドロステ・ココア」という商品名から来ている)。

 

なかなか凝ったアイデアの脚本が全てという作品。ワンシチュエーション・ドラマであり、映画内の経過時間と映像の時間が一致している(それを長回し一発で撮っているように見えるが、インタビューによると実際には6つのカットからできているらしい。それでも一つ一つのカットはかなり長く、予告のNGシーンでカトウ役の土佐和成が悔しがっているのは、1カットが長いことから来ているもの)。

 

そうしたワンシチュエーションの雰囲気や演劇俳優の演技から、この映画はまさに演劇を観ているような鑑賞感。その「舞台劇っぽさ」はこの作品の「味」でもあるのだが、俳優の若干ディフォルメされた演技の好みは分かれるところ。

 

タイムトリップもの、タイムループものは矛盾が生じやすいが、この作品は2分という超近々未来の設定をうまく使っていた。それでも矛盾はないではない。例えば、最初のピックの場所を教えるシーンで、2分後の自分は更に2分後の自分に教えられたと言っているが、どこかの時点で見つけなければピックの場所は分からないとか、2分後の自分と2分間以上話し続けていたらどうなるのか、とか。

 

最初は2分間に起こったことを反復するだけだったのが、少しずつそれが揺らいで、行動が未来から言われたことに縛られるという展開も面白かった(未来を知れば簡単に未来を変えられるはずという矛盾を逆に利用している)。MIBよろしく人の記憶を消すタイムパトロールも、チープなSFを狙っているようで悪くはなかった。

 

繰り返しの多い単調で冗長さから70分という尺は持ってぎりぎり。もっと短くまとめることで締まった構成にもできたはず。それでもアイデア勝負の作品で、そのアイデアは「勝ち」だろう。観て損はない。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ドロステのはてで僕ら』予告編