FLICKS FREAK -23ページ目

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

関東大震災の2日後に治安警察法によって検挙され、大逆罪で死刑判決を受けたアナキスト金子文子と朴烈(パクヨル)の物語。監督は『ソウォン/願い』 (2013)が素晴らしかったイ・ジュニク。

 

関東大震災後に朝鮮人虐殺が起こったことは史実として知っていたが、その官民による朝鮮人虐殺を正当化する目的で、金子文子と朴烈が爆弾犯としてフレームアップされた「朴烈事件」は知らなかった。

 

関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺の人数には、南京事件同様(南京事件を扱った映画としては『南京!南京!』が秀逸)、数の多少に異論はあれど、虐殺があったことは事実だろう(それを正当化する「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という言説は、新聞に掲載されたからといって事実とは認められない。関東大震災直後の混乱状況において、新聞社は取材能力を喪失しており、流言飛語の類を掲載したことは事実であり、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という記事はその後、誤報であったと新聞社自ら否定している。関東大震災直後には、「富士山が噴火した」という記事もあり、もし全ての新聞記事が事実であるなら、富士山はその時に噴火していたことになる。関東大震災後の朝鮮人虐殺を扱った作品である森達也監督『福田村事件』は優れた作品)。

 

金子文子は、現代韓国では「良心的日本人」とされ受勲までしている。この作品をそうした背景なしに観れば、恋愛物語としてはよくできていると言える。しかし、その背景を勘案すると、美化に過ぎるという印象は拭えない。

 

実際の金子文子の人生を調べてみると、実に過酷。戸籍もなく生まれ、幼少期から父の不貞を見せられ、母親もほかの男と同居する中で育ち、子供ながら自殺を考えるほどだったとされる。その彼女が出会い恋に落ちたのが無資産無名の朝鮮人・朴烈。彼女は朴烈と共に大逆罪で死刑の宣告を受け、恩赦により無期懲役に減刑されるが、恩赦令状を破り捨てた。そして死刑判決後から121日後に縊死している(その「121日」が強調されることが多いが、彼女は大正12年9月3日に逮捕拘留され、亡くなった大正15年7月23日までの期間は約2年10ヶ月以上)。

 

この作品を悲惨な環境においても支え合った二人の純愛物語として観ると実に美しいが、事実に基づいた作品だけに、金子文子にフォーカスすると、この作品は相当「甘い」作品のように感じる。日本人の多くが知らない史実を伝える韓国発の作品として価値はあり、日本を必要以上に貶めるにおいは全く感じないが(むしろ日本人・金子文子を称えるものであり、関東大震災後の朝鮮人虐殺の残虐行為は事実としてありのままに伝えている)、アナキスト金子文子はもっと激しい生き様だったのではないかと想像する。フィクションの恋愛ものであれば、実によくできていると言えるのだろうが。

 

★★★★★★ (5/10)

 

『金子文子と朴烈(パクヨル)』予告編