近年のホラー映画では出色の出来だった『WEAPONS/ウェポンズ』(2025)のザック・クレッガー監督。彼の単独長編監督作品であり出世作となったのが本作。彼は本作以前にコメディ映画を共同監督として数本撮っているが、ホラーに転向したことが成功につながったと言える。
ホラーのサブジャンルに、山奥や人里離れた田舎の閉ざされた土地を舞台とする「バックウッズホラー」があるが、この作品は荒廃したデトロイト郊外を舞台としているところに工夫が見られた。そしてその過疎化した郊外にある民泊の一戸が舞台。まず登場する二人がAirbnbとHomeAwayというアメリカ人なら誰もが知るブッキングサイトでオーバーブッキングにより出会うという設定が新しかった。
そして前半は、ストーリーがどこに向かっているのか分からない緊張感があり、その一軒家に謎の地下室を見つける時点で緊張感はピークに。
ホラーの場合、恐怖の対象の正体が明らかとなった時点で、緊張感=怖さは減少するものだが、ザック・クレッガーはそれを大胆な転調で回避しようとする工夫をすることが彼の作品の共通点。前半の静かな展開で緊張感を高めた後、転調するとアクセルを吹かせまくるのだが、この作品は、「ここまでするか」感がブラックコメディになっていた『WEAPONS/ウェポンズ』ほどには成功していないように思えた。
「ホラーあるある」で登場人物が普通ならしないであろう行動を取ることはこの作品でも見られた。また主人公が被害を訴えて警察に助けを求めるのだが、警察が全く相手にしないのは不自然(IDを持っていないだけなのだが、彼女の車がそこにあるのだから所有者照会をすれば身分は証明できるはず)。デトロイト警察はそれほどひどいという揶揄なのかもしれないが。
後半に地下室の由来が明かされ、それは身の毛もよだつ猟奇さなのだが、その「結果」は悲哀の漂う存在であり、エンディングは復讐ではなくmercy killingという設定もこの作品の新しさだった。(極力ネタバレを避けつつ)「母性愛に共感した」心情が見て取れた。「バーバリアン(野蛮人)」というタイトルも、「誰が本当の野蛮人か」と皮肉が効いていた。
ザック・クレッガーは、『バイオハザード』新作(これまでのシリーズの設定をリセットした上でのリブート作品)の監督をしており、9月に全米公開され評判は上々なので楽しみではある。
★★★★★ (5/10)
