『黒牢城』 (2026) 黒沢清監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

自分は黒沢清とはよほど相性が悪いのだろう。若い人の間では、「クロサワ」と言えば「明」ではなくて「清」らしいが、自分にとっては彼がもう一人のクロサワと並び評される理由は理解できずにいる。これまで彼の作品で、よかったのは『トウキョウソナタ』 (2008)と『スパイの妻』 (2020)くらいなもので、あとはあまり感心できる出来ではなかった。そしてこの作品もその一つ。

 

原作は米澤穂信の同名小説で、直木賞受賞に加え4大ミステリランキングを完全制覇した史上初の作品(後に青崎有吾の『地雷グリコ』が完全制覇を果たしている)。原作は未読だが、相当面白いということだろう。この作品は、原作を読んでいる人、あるいは原作を読んでいなくても、荒木村重という実在の人物にまつわる逸話や時代背景を理解している人は楽しめるのかもしれないが、原作未読の自分は面白いとは思えなかった。

 

『黒牢城』の舞台は、16世紀の戦国時代、摂津国の有岡城。織田信長に謀反を起こした城主の荒木村重が籠城する中、主君羽柴秀吉の命を受け翻意の説得に来た軍師黒田官兵衛を土牢に幽閉する。その後城内で次々と起こる難事件に官兵衛を「安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)」として解き明かす歴史ミステリー。『羊たちの沈黙』の戦国時代劇バージョンと言える設定だが、『羊たちの沈黙』ではレクターがクラリスを手玉に取っていたのに対し、この作品ではあくまで本木雅弘演じる村重が主導権を持っていたことが違い。

 

ミステリー解明が核をなす作品ながら、その謎解きがいかんせんショボい。官兵衛は、村重が書き起こした関係者証言をもとに事件の解明を推理するのだが、あまりに安易に真実を見抜いてしまう(真実かどうかは、フラッシュバック映像を使わないという手法ゆえ観客には明示されず)。

 

官兵衛は、殺されることなく幽閉されることで寝返ったと信長陣営には思われ(当時、敵対する使者は囚われることなく首をはねられ、その首が送り返されたから)、そのことにより信長のもとにいた官兵衛の息子は処刑される。そして一年あまりも土牢に幽閉されながらも、息子の死と自分の逆境の直接の原因である村重と親し気に語り、謎解きに協力する官兵衛のキャラクターは全く説得力がなかった(最後の復讐というどんでん返しを内に秘めていたという設定があったにしても)。

 

そして、そうしたミステリー作品としての弱さ(それはあくまで映画化作品でのことであり、原作はそうではないと想像するが)以上に、「真犯人」の動機が腑に落ちない。敢えて主語をぼかして言えば、「進めば極楽、退かば地獄」と作中で幾度となく唱えられる教えが、為政者に都合よく民を消費するための欺瞞であることを告発することが動機。それは長島の一向一揆の地獄を繰り返さないというところから来ているのだが、なぜ天罰を示すことで、それが達成できるかのロジックが全く理解できなかった。神仏が実在すれば「逃げて生き延びても極楽はある」ということになるという論理が分からなかった。そして、そのためには人(自念、能登入道)を殺してもいい身勝手さは矛盾ではないかと納得がいかなかった。

 

キャストは豪華。その達者な役者を集めて、時代劇として一応格好はついている。とはいえ、監督が不慣れなジャンルに対応するためだいぶ無理をしているというふうに終始見えてしまい、結果としてストーリーテリングの拙さだけが露呈してしまった印象。

 

本木雅弘が終始頑張っていたが、緩急をつけた演技で、茶器にこだわって名器「寅申」を手放すことになることを惜しんで地団太を踏むシーンはよかった。

 

繰り返しになるが、原作を読んでいる人や、登場人物や時代背景に少なからず事前の知識がある人は違った感想になるのではないかと想像する。

 

★★★★ (4/10)


『黒牢城』予告編