SF映画の金字塔である『エイリアン』(1979)を始めとするエイリアン・シリーズの最新作。
エイリアン正史としては、前2作『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』は『エイリアン』の前日譚であり(前者の設定は2093年、後者の設定は2104年)、この作品の設定は2142年であり時系列的には『エイリアン』(2122年の設定)と『エイリアン2』(2179年の設定)の間に当たるが、リプリーが登場しないことからスピンオフ作品と位置付けられている(ちなみに『エイリアン3』は『エイリアン2』と同年の2179年、『エイリアン4』は2381年の設定、そして2014年にセガから発売になったゲーム『エイリアン アイソレーション』はリプリーの娘を主人公として時代設定は本作と同じく『エイリアン』と『エイリアン2』の間)。
監督は『ドント・ブリーズ』 (2016) のフェデ・アルバレス。『ドント・ブリーズ』は、かなり出尽くし感のあるスリラーというカテゴリーでストーリー的な面白さを盛り込んだジャンル映画としては佳作と言っていい作品だった。そして第一作目から前2作で復帰した御大リドリー・スコットの後を受けるのはさぞかし荷が重かっただろう本作は、ハードコアな『エイリアン』ファンからすると健闘している部類という評価。ただ前作までのオマージュをふんだんに盛り込みつつ原点回帰を意識するあまりに、前作群を越える魅力には乏しいと言える。
前作群、特に『エイリアン』~『エイリアン4』のオマージュは満載。まず大筋のストーリー=「宇宙船の乗組員がエイリアンに遭遇し、次々と殺されるが女性の主人公がエイリアンを船外に射出して一人生き残り、航行ログを残して冷凍装置で眠りにつくエンディング」は『エイリアン』そのもの。昭和レトロ玩具の「ドリンキングバード(平和鳥)」も『エイリアン』で印象的だったが、本作でもしっかり登場。『エイリアン2』からは有名なセリフ"Get away from her, you bitch."とパルスライフル、『エイリアン3』からはゼノモーフがリプリーの顔に迫る歴史的シーンの再現、ゼノモーフの造形はビッグチャップに近いのだが『エイリアン3』(宿主が犬)でのように四つ足っぽくもあり牙の金属感と全体のヌラヌラ感は『エイリアン3』のゼノモーフに近い印象、そして『エイリアン4』からはニューボーン・エイリアン誕生の経緯の踏襲といったところだろう。過去作のリスペクトが感じられ、ファンとしては満足できるもの。
ただ過去作においては、携わった監督が「リドリー・スコット越え」を狙って新機軸を打ち出した野心を感じたが(それが成功したかどうかは置いても)、本作にはそうした大胆な目論見は少なかったように感じた。そして個人的には、エイリアンが主役であるべきであり、登場するエイリアンは一体というのが好み(『エイリアン』及び『エイリアン3』の設定)。群れで出てきて一頭のエイリアンの重要度が薄まった『エイリアン2』のがっかりは記憶に新しい(ジェームズ・キャメロン嫌いもあるのだが)。またエッグチェンバーが全く登場しないのはいかがなものか。生きた人間を繭に閉じ込めるシーンがあるが、それは目の前にエッグチェンバーがあって意味のある設定。またこの作品は冒頭で、『エイリアン』で爆破されたノストロモ号から射出され宇宙に浮遊していたゼノモーフを回収するところから始まるのだが、ゼノモーフ一体からどうやって多数のフェイスハガーを採取したというのだろう。
『エイリアン』はシガニー・ウィーバーの初主演作品。『アニー・ホール』 (1977) のセリフなしの端役でデビューした彼女は当時30歳。彼女が冷凍睡眠装置に入るためのへそ出しビキニショーツでエイリアンに対峙する姿はホラー映画お約束の添え物のお色気があったが、本作の主人公レインを演じたケイリー・スピーニーは実年齢24歳ながら(映画の中では21歳の設定)、子供体型が下着姿で痛々しかった。ソフィア・コッポラ監督『プリシラ』で10歳年下のプリシラを演じても違和感がなかったことが思い出される。
この作品で過去作に比して優れていると思われるのはアンドロイドの立ち位置。レインは弟と慕うアンドロイドのアンディの救命のため(アンドロイドに命はないのだが)自分の命を賭するのだが、いずれAI技術がシンギュラリティに近づくにつれ、機械にそこまで思い入れることが普通になっていくこともあるのだろう。そうしたアンドロイドと人間の関係性の設定が未来的だと感じた。またアイザック・アシモフが示したロボット三原則の第一条が、多数の命を少数の命に優先させるためアンドロイドによって破られることが度々モチーフになっているが、感情を持たないアンドロイドの判断の評価はAI時代到来には大いに議論されることになろう。また重力発生装置の伏線回収はよく出来ていた。
過去作のいいとこどりのこの作品は、過去作を観ていない人の方がむしろ楽しめる作品なのではないだろうか。エイリアン・シリーズのファンにとっては既視感満載のこの作品の評価は分かれるところだろう。
★★★★★★ (6/10)
