女優を夢見るSMの女王レイとホテトル嬢をしながら玉の輿を狙うアユミの二人の青春物語。
レイを演じる鈴木砂羽の初主演作品。エンディングロールで彼女の子供の頃からのプライベートビデオが流れるように、全編彼女の存在感が圧倒的な作品。映像に荒木経惟撮影の鈴木砂羽の写真が挿入され、この映画が鈴木砂羽の虚実を映し出す一つの作品集のような印象を与えていた。またアユミを演じたのは、高橋伴明監督の近作『夜明けまでバス停で』にも出演していた片岡礼子。彼女の演技も鈴木砂羽に一歩も引くものではなく印象的だった。
風俗嬢たちの過激描写もあるが、猥雑さはなくむしろ爽やかな印象を受ける印象。成人指定の作品ながら、松尾スズキ、阿部サダヲ、宮藤官九郎、杉本彩、大杉漣、田口トモロヲ、武田真治、哀川翔、鈴木ヒロミツといった豪華な出演陣が揃っていた。
ただ青春物語としては方向性が見えず、過激な性描写やアラーキーの写真を取り除くとストーリーの展開は少々物足りない感じ。公開年の1994年と言えば既に平成なのだが、作品に昭和の雰囲気が色濃く残っていて今観て新味は感じられなかったのは正直なところ。
好きだったのは、レイとアユミが明け方六本木から渋谷に疾走するシーン、レイの性病が分かって劇団員がみんな凍り付く中軽やかなステップでレイが立ち去るシーン。そして萩原流行がよかった。彼が演じたのは、ハードSMが好きなMで、受付では礼儀正しく低姿勢なヤクザ。そのギャップがよかった。レイの劇がはねた後、レイにキスをされたと勘違いしてボロボロ涙を流すところは最高。そして2016年に閉館したシネマライズが懐かしかった。
またストーリー上は全く重要ではないのだが、小劇団『ドリームキッズ』の劇中劇(まぐろ漁船に乗り込む彼氏をレイ演じる彼女が見送る)は、あまりにもひどすぎないだろうか。
必見とは言いにくいが、なかなか面白かった。わいせつ感は人によって尺度が異なるため、そうした期待に沿えるかどうかは定かではないが。
★★★★★ (5/10)