『点』 (2017) 石川慶監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

注目されている石川慶監督の26分のショートフィルム。主題歌はyonige「ワンルーム」だが、メジャー映画会社配給作品にありがちなタイアップソングではなく、その曲にインスパイアされたオリジナル脚本を石川慶監督が書いたというもの。yonigeがメジャーデビュー曲のミュージックビデオへの出演を山田孝之に依頼したところ、山田が楽曲にインスパイアされた映画を作ることを提案し製作が決まったという経緯。

 

田舎町で父親の床屋を継いだ高志。 ある夏の日、幼馴染で高校時代の恋人だったともえが店にやって来る。翌日結婚式だという。 14年ぶりに再会した二人だったが、あの頃と今が交錯して会話はどこかぎこちない。 「うなじの毛を剃って」とお願いするともえを、高志は少し戸惑いながらも店の中へ案内する。

 

(作品冒頭にともえの母親役の俳優が少し映像に出るが)ほぼ全編、山田孝之演じる高志と中村ゆり演じるともえの二人劇。この二人の微妙な距離感の演技がとてもよかった。特に、再会に心の準備ができていなかった高志の、驚きながらも思い出が二人の隙間を埋めていき、それでも家庭をもった男として節度ある態度をとる絶妙なニュアンスを山田孝之が演じ切っていた。

 

ともえは都会での生活、特に不倫相手との恋愛に疲れていて、それが昔の恋人に会うきっかけ。その再会が心の清涼剤になったことを、前髪を切って(その前髪が少々ダサく見えたのはご愛敬?)さっぱりとした表情が表していた。彼女の心の変化、前向きな明日への姿勢がこの短編のテーマ。

 

石川慶監督は、原作のある長編作品を4作品監督しているが(2017年『愚行録』、2019年『蜜蜂と遠雷』、2021年『Arc アーク』、2022年『ある男』)、是非彼のオリジナル脚本の長編作品を観てみたいと思った。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『点』予告編