『グリース』 (1978) ランダル・クレイザー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

先週(2022年8月8日)73歳の生涯を閉じたオリビア・ニュートン=ジョン。歌手としては、この作品の挿入歌であるジョン・トラボルタとのデュエット曲「愛のデュエット」を含む5曲の全米第一位をリリース。特に「フィジカル」(1981-82)はビルボードHOT100で、デビー・ブーンの「恋するデビー」(1977)と並ぶ10週連続1位というヒットを記録する(1992年にボーイズIIメンの「End of the Road」=13週1位に塗り替えられるまで10年間記録として残った)。俳優としてはこの作品が最も知られたところだろう。手持ちのDVDで再鑑賞。

 

ブロードウェイミュージカルの映画化作品だが、言うまでもなくこの作品のよさは優れた楽曲。バリー・ギブ(ビージーズの長兄)のオープニングテーマから強力チューン満載の作品は久々に観ても十分以上に楽しめた。特にいいのは、ミュージカルではケニッキーの持ち歌だが映画ではジョン・トラボルタ演じるダニーが歌う「グリースト・ライトニン」か。特にダニーがポンコツの車の下をスライディングして出てくると、車が近未来的なスタイリッシュな型に変わるのは映像的にも楽しかった。あのサイコロのマスコット(「ファジー・ダイス」というらしい)は懐かしい感じ。但し、この曲のシーンはこの作品をミュージカルとしてみた場合の弱さを表しているだろう。それはジョン・トラボルタ以外の主要な俳優が踊れないこと。やはりミュージカルは完成度の高い群舞が見どころの一つだから。

 

ジョン・トラボルタのダニー役とオリビア・ニュートン=ジョンのサンディ役はまさにはまり役。彼ら以外の誰がやってもこれだけのヒット作にはならなかっただろう。特にジョン・トラボルタは、この直前の作品が『サタデイ・ナイト・フィーバー』であり2作続けて超ド級ヒット作に主演することになるが、作品の評価は置いておき『サタデイ・ナイト・フィーバー』のトニーよりも『グリース』のダニーの方が、若いトラボルタらしい魅力にあふれた役だったと思う。特に体育会系にチャレンジする彼は、実にチャーミングだった。オリビアの清楚な雰囲気がサンディにはぴったりだっただけに、個人的には「good girl gone bad」というエンディングは微妙なところ。

 

作品の難を言えば、さすがに俳優陣の年齢の高さは役どころからして無理があるか(16-17歳の設定で、トラボルタは公開当時24歳、オリビアは29歳、リッゾ役のストッカード・チャニングに至っては34歳)。トラボルタ主演の青春映画としては、恋愛の孤独さ(恋人を失う恐怖から恋をすれば孤独になると論じたのは福永武彦)を描いた『サタデイ・ナイト・フィーバー』と比較して深みはないものの、エンターテインメントとして魅力にあふれた作品。興行成績の差が(『グリース』3.9億ドル vs『サタデイ・ナイト・フィーバー』2.4億ドル)客層の広さを物語っているだろう。

 

R.I.P, Olivia.

 

★★★★★★ (6/10)

 

『グリース』予告編