『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』 (1991) バーブラ・ストライザンド監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

サウス・キャロライナのサリバンズ島に住む元教師トム・ウィンゴは、ニューヨークに住む詩人の双子の姉サヴァンナが2度目の自殺未遂を図ったと、父と別れて再婚した母から聞かされ、ニューヨークへと向かった。姉のかかりつけの精神科医スーザン・ローエンスタインはサヴァンナの自殺未遂の原因が幼少期にあるのではと、トムに過去の話を求める。最初はそりが合わなかったトムとスーザンだったが、ウィンゴ家の過去を語ることでトムは忌まわしい過去から解放されたように感じ、二人の心が通い始める。トムはスーザンに乞われて彼女の息子のフットボールのコーチをし、またスーザンが世界的なヴァイオリニストである夫のと冷たい関係にあることも知った。

 

サウス・キャロライナの沿岸地方とニューヨークの大都会を舞台にして、暗い過去を背負った男と、一見何の不足もなく華やかな暮らしだが孤独に苛まれる女の恋愛の物語。

 

バーブラ・ストライザンドはグラミー賞を10回も受賞しているように、歌手としては押しも押されもせぬ大スターであることは言うまでもない。彼女のスクリーンデビューが1968年ウィリアム・ワイラー監督『ファニー・ガール』。この作品でバーブラはアカデミー主演女優賞を獲得している(彼女のオスカーは、1976年『スター誕生』で歌曲賞の計2回)。そして『愛のイエントル』(1983)で初監督、この作品が監督2作目となる。この作品はアカデミー作品賞にノミネートされたが、バーブラは監督賞にはノミネートされなかった(俳優の監督兼業には少々冷たいアカデミー会員の印象)。

 

いわゆるW不倫なのだが、恋愛ものとしてはかなり微妙なストーリー。精神科医として成功し経済的にも豊かな都会のキャリアレディと、失業中の元教師の田舎出身の男との恋愛が、ひとときのよろめきのように描かれるのはいかにも前時代的。一番疑問に思うのは、トムの決断が彼の意志ではないこと。ほかの男に走った妻からの連絡が理由で家庭に戻る決断をしたようであり、スーザンへの気持ちが軽くなってしまっていた。ただ、甘々のラブ・ロマンスだけでもないのは、ウィンゴの過去があまりにも苛烈すぎて、さすがアメリカの物語という複雑さを感じさせた。

 

邦題で『愛と~』とつくと少々安っぽい感じだが、作品賞にノミネートされるだけのクオリティにはあったと思わせた作品。

 

★★★★★ (5/10)

 

『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』予告編