日々の生活のためバイトに追われ、好きで始めたはずのバンド活動もままならずに楽しいことなどなにひとつなく、
公開予定だった『街の上で』が新型コロナウィルス感染拡大で公開延期になり、先に公開されることになった今泉力哉監督最新作の『あの頃。』。日常生活と地続きの恋愛群像劇を得意とする今泉力哉監督としては、少々異色の「オタ活」「推し」の世界に生きる男たちの友情物語。
アイドルに血道を上げる中年男と言えば、少々キモい存在であり、オタ活を「所詮現実逃避だろ」といささか冷ややかに受け止めていた気持ちは、彼らの「現実肯定力」に完全に覆された。それは、登場人物が度々口にする「今が一番楽しい」という言葉であり、「若い奴が『あの頃はよかった』ってのはダサい」とする姿勢に表れている。いかに金がなかろうとも、いかに異性にもてなくても、ハッピーだと思うポジティブさが清々しかった。
「ケチでスケベで小心者のネット弁慶」のコズミンという、どう見ても鬱陶しい嫌われキャラ(演ずるのは仲野太賀。先日観た西川美和監督『すばらしき世界』でも説得力ある抜群の演技を見せていた)を配し、その「イヤな奴」を受け止める彼らのおおらかさがストーリー的に面白さを増していた(とはいえ、「生前葬」のイジり方はやり過ぎだが。そして、彼の末期の姿はこの作品の全体のトーンに不釣り合いなほど妙に生々しくて痛々しかった)。
実際に松浦亜弥と同じ中学で二学年下だったという松坂桃李が、その頃の思いを込めてであろう、リアリティ豊かに主人公・劒を演じていた(グンパン姿の松坂桃李は見もの)。そして、山崎夢羽(BEYOOOOONDS)演じるあややの再現力は驚き。握手会のシーンは、ファンタジックな見せ場だった。難を言えば、西田尚美演じる高校教師とあやコンで出会うシーンは、ストーリー的に広がらず、いらなかったかと。
やはり今泉力哉監督は「あるある」感満載の恋愛群像劇の方がいいとは思ったものの、これはこれで普遍的な青春物としてよかったと感じた次第。
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★★★★★★ (6/10)
