『きっと、またあえる』 (2019) 二ティーシュ・ティワーリー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

インド映画のベストと言えば、文句なく『ダンガル きっと、強くなる』 (2016)。レスリングをモチーフに、親子鷹+姉妹愛が描かれた秀作だった。その二ティーシュ・ティワーリー監督の最新作。

 

アニは、名門ボンベイ工科大学卒のエリートビジネスマン。大学時代に知り合った同窓の妻マヤとの間には、両親と同じ大学を目指す息子のラーガヴがいた。アニとマヤは離婚し、ラーガヴはアニが引き取って一緒に暮らしていた。ラーガヴが受験に失敗し、「負け犬」と呼ばれることを怖れて自殺を図る。アニの完璧主義がラーガヴを追い詰めていたと責めるマヤ。昏睡状態の息子に対して、自分もかつては「負け犬」と呼ばれていた大学時代の話を語りかけるアニだった。

 

大学時代と、主人公たちが親世代になった現在という2つの時間軸で物語が構成されている本作。大学時代の思い出話の中心になるのが、「負け犬寮」こと4号寮での寮生活での男の友情。そして、女子率が極端に低い工科大学で、「ハレー彗星」レベルの美女マヤとの出会い。クライマックスは、万年最下位の4号寮が、エリート寮の3号寮を追い落とそうとする寮対抗の競技会。かなりストレートなストーリー展開で、筋書が読めてしまうと言えばそうなのだが(アンダードッグがエリートを負かそうとするスポ根系にありがちな展開)、シンプルに楽しませてくれた。

 

『ダンガル きっと、つよくなる』では隠れた社会的問題意識として、インドにおける男女格差があったが、この作品に敢えて読み取るならば、インドの学歴社会における価値観。100倍の倍率のボンベイ工科大学(正確には23の国立大学の総体である「インド工科大学」のボンベイ校)に入学すれば、将来は約束されているのだろう。学歴がそのまま経済格差につながり、選別されたごく一部の人が経済的に豊かになるという社会構図。そうした成功の道筋を歩むことだけが幸福なのではないという、既定の価値観の批判がこの作品にはある(息子の自殺企図をきっかけにそれに気付く主役アニを演じたスシャント・シン・ラージプートが、この作品のクランクアップ翌年に自ら命を絶ったのは皮肉な現実)。

 

大学生時代と大人になってからの二役を特殊メークで同じ役者が演じ、「彼ら」が同時に出てきて踊るクロージングは、ボリウッド映画ならでは。「これがなくっちゃね」と楽しませてくれる。

 

『ダンガル きっと、強くなる』の完成度はないが、インド映画のエッセンスをバランスよく盛り込んだ良作。インド映画初心者にはうってつけの作品。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『きっと、またあえる』予告編

 

インド映画ベスト5

 

第一位 『ダンガル きっと、つよくなる』 (2016) ★★★★★★★★ (8/10)

第二位 『きっとうまくいく』 (2009) ★★★★★★★★ (8/10)

第三位 『地上の星たち』 (2007) ★★★★★★★ (7/10)

第四位 『RANG DE BASANTI』 (2006・日本未公開) ★★★★★★★ (7/10)

第五位 『MUNNA BHAI M.B.B.S.』 (2003・日本未公開) ★★★★★★★ (7/10)