『いつか晴れた日に』 (1995) アン・リー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

ジェーン・オースティン原作『分別と多感』を映画化した、アン・リー監督のハリウッド初進出作。脚本は主演を務めたエマ・トンプソン。アカデミー賞では作品賞、主演女優賞(エマ・トンプソン)、助演女優賞(ケイト・ウィンスレット)、脚色賞ほかにノミネートされ、脚色賞をエマ・トンプソンが受賞。エマ・トンプソンはそれまでもテレビドラマの脚本を手掛けていたが、初の映画脚本でオスカーを受賞している。

 

19世紀初頭のイングランドでは男系相続が法律で定められていた。ヘンリー・ダッシュウッドは死ぬ間際に、財産を相続することができない残される妻と3人の娘の身を案じ、先妻の息子のジョンに彼女たちの世話を託してこの世を去る。しかしジョンの強欲な妻のファニーは義父の遺言を反故にし、彼女たちを追い出そうとする。分別ある長女エリノアは礼を尽くすが、多感な次女のマリアンヌはあからさまに嫌悪の情をみせ、おてんばな三女マーガレットは隠れているばかり。そんな折り、屋敷を訪れたファニーの弟エドワードの礼儀正しく控え目な態度にエリノアはひかれ、互いに好感を抱く。またマリアンヌは年の離れたブランドン大佐に心を寄せられるが、彼女は若く魅力的なウィロビーに夢中になる。しかしウィロビーは、理由も告げることなくロンドンへ去り、マリアンヌは悲しみに沈む。一方、エリノアはエドワードには秘密の婚約者ルーシーがいたことに大きな衝撃を受ける。

 

姉妹のお互いを慈しむ愛情を軸に、女性の「理想の結婚とは」を描いた作品。性格が両極端の彼女たちの対比が非常に面白い。

 

そして恋愛物でありながら、二転三転する展開がよくできている。欧米では誰もが知っている人気作品を原作としているだけのことはある。そしてその原作の面白さを、映画というフォーマットに落とし込んで魅力ある作品に仕上げているのは脚本のエマ・トンプソンと監督のアン・リーの功績だろう。また、アジア人の監督が描いたとは思えないほど、イギリスの貴族社会を優雅に描いているアン・リーの才能は、その後の彼の国際的成功を確信させるものだった。

 

時代の違いや一般的な身分とは違う貴族階級が舞台となっているとはいえ、恋愛や結婚に至る過程が現代的な感覚からすると少々安直であり、恋愛物としてみるとそれほど共感する部分は個人的には少ないと感じた。またエリノアとマリアンヌがタイプこそ違え、共に魅力的に描かれているのに対し、登場する男性陣がそれに匹敵するほど魅力的には描かれていないのも恋愛物としては弱いと感じる。それよりも、この作品のよさは、姉妹の互いを思いやる気持ちの美しさにあると思う。

 

また(多分、映画化に際して。原作未読故に確たることは言えないが)、大きなプロットの穴があることは気になった(以下、ネタバレあり)。

 

大逆転の末のハッピーエンドの鍵は、エドワードが勘当され相続すべき財産を失ったこと。その勘当の理由は(映画を観る限り)、資産家でないルーシーとの結婚を姉のファニーが許さなかったからと理解した。なのに、なぜそのルーシーと、エドワードの代わりに財産を相続することになったエドワードの弟のロバートの結婚をファニーが許すのだろうか。つまり、エドワードの勘当の理由はルーシーの問題ではないとしなければ辻褄が合わないが、そのように描かれているのは全く納得がいかなかった。

 

しかし、そうしたプロットの穴も気にならないほど、ラストの爽やかな感動は、この作品を、姉妹愛をテーマとした優れた作品と感じさせる。ジェーン・オースティン原作の2005年の『プライドと偏見』(ジョー・ライト監督)もよい作品だったが、これはそれ以上。勧められる一本。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『いつか晴れた日に』予告編