『ラストキング・オブ・スコットランド』 (2006) ケヴィン・マクドナルド監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

1970年代にアフリカのウガンダで独裁政治を敷いた実在の人物であるイディ・アミンが、政権を奪取してから独裁者へとなるまでを、架空の人物である主治医となった若きスコットランド人の目を通して描いた作品。

 

アミンはイギリス植民地軍にいた体験から、対英感情という共通項を持つスコットランド人に親近感を覚えており、自らを「最後のスコットランド王」と称していたというエピソードになぞらえてタイトルがつけられている。

 

実在の人物をモチーフとしていながら、フィクションの部分が多いことは知っておくべき。しかしこの映画を観なければ、イディ・アミンという人物の存在すら知らなかっただろうし、ウガンダという遠く離れた国に関心を持つこともなかったであろう。

 

イディ・アミンは反政府主義者を粛清したことで「黒いヒトラー」や「アフリカで最も血にまみれた独裁者」と呼ばれるが、粛清した人民の数は30万人とも40万人とも言われている。スキャンダラスなエピソードには事欠かないが、その最たるものは、「政敵を殺してその人肉を食べた」として「食人大統領」と呼ばれたことだろう(作品の中では、アメリカのメディアがそうした嘘を書きたてていると描写されている。そして実際のイディ・アミンは菜食主義者)。

 

作品も、主要な登場人物たる「スコットランド人の若い医師」が架空の人物だけに、実際に起こったこととは異なることが少なくないと思われる。アミンの第三夫人の彼との情事による妊娠が発覚し、アミンに殺されるいきさつは、この映画がトラウマになるほどの残虐なもの。実際にも、アミンの第二夫人はアミンに殺され、その理由は彼女の不倫とされている。そして彼女の遺体が切断され、遺族に引き合わされる前に縫い合わされたところまでは事実と合っているが、「手足を逆に」というのはフィクションらしい。

 

この作品が非常に興味深いのは、絶対的悪のアミンに対する「良心」が彼の元主治医であること。若い医師は、彼に代わってアミンの信任を得て小市民的欲求を満たしていくつまらない人間なのだが、元主治医が彼を救う代わりに命を奪われてしまうというアイロニー。それは、元主治医は黒人であり、外の世界(特に先進国である欧米諸国)に真実を訴えるには白人でなければならないという、厳然としてある人種差別を伺わせる。フィクションとして白人の若い医師を設定して、彼の目を通した物語としているがゆえに我々は大いに納得するのだろう。

 

イディ・アミン役のフォレスト・ウィテカーは、この作品でアカデミー賞及びゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞するが、狂気の独裁者を実に説得力ある演技で演じていた。

 

アフリカの小国に「自分探しの旅」で出た若い医師が、ひょんなことからその小国の統治者に気に入られ、一気に高みに登りつめるのだが、その過程では常に恐怖と背中合わせという緊張感が伝わってきた。実話を基にしているということを除いても、十分、スリリングなドラマとして楽しめる。若い医師の国外脱出のラストシーンは、『アルゴ』を思い出させた。しかし、彼が国外へと飛び立つ機に乗っていると気付いたなら、無線で呼び返せばいいのではという野暮なことを考えてしまった。

 

この映画を観たら、あみんは彼女たちのグループ名をそうつけなかったであろう(あみんは、さだまさしの「パンプキン・パイとシナモン・ティー」に登場する喫茶店「安眠(あみん)」から取ったが、さだまさしはイディ・アミンの名前からその喫茶店の名前を取っている)。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ラストキング・オブ・スコットランド』予告編