『セブン・サイコパス』 (2012) マーティン・マクドナー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

前作『ヒットマンズ・レクイエム』で長編監督デビューを果たしたマーティン・マクドナー監督。舞台をアメリカ(ロサンゼルス)に移し、前作に続きコリン・ファレルを起用。アイルランド出身のコリン・ファレル以外はアメリカの役者を使って撮影された作品。映画の中に、コリン・ファレル演じる映画脚本家マーティを友人のビリー(サム・ロックウェル)がアイルランド人ネタを使って揶揄するシーンがある。

 

脚本家のマーティは、新作『セブン・サイコパス』の執筆に行き詰まり、 親友のビリーやハンス(クリストファー・ウォーケン)にアイデアを求めた。ビリーとハンスは金持ちの飼う犬を連れ去っては、それを飼い主に返して小遣い稼ぎをしていた。彼らが誘拐した一匹の犬の持ち主がマフィアの親分(ウディ・ハレルソン)であったことから大きな問題に巻き込まれることに。

 

前作よりも更にユーモアの量が増している。脚本家であるマーティが手掛けている『セブン・サイコパス』のアイデアが劇中劇として度々登場する。サイコパスのアイデアとして、マーティや、ビリー、ハンスが「こんなのはどうだ」というものがイメージとして描かれている。その中には、かなりブリリアントものもある。特に気に入ったのは、ベトナム戦争の復讐を図るベトナム人の恩讐が、自身が焼身自殺をするベトナム人僧侶ティック・クアン・ドックに乗り移ることで解き放たれるというハンスのアイデア。かなり会話に重点が置かれた面白味は、クウェンティン・タランティーノを思わせる。そしてユーモアのブラック度はコーエン兄弟に通じるものがある。マーティとビリーが作品中で映画を鑑賞しているシーンがあり、そこで使われていたのは北野武監督の『その男凶暴につき』。バイオレンスの趣向という点で相通じるものがあるのだろう。

 

かなり練り込まれたマーティン・マクドナー自身による脚本。前作より洗練された部分もあるが、盛り込みすぎという感がないでもない。その点、前作の方がまとまりがよく、古都ブルージュの雰囲気がウェットなブラック・ユーモアに独特の雰囲気を与えていて味があった。それでも十分に面白い作品。ただ笑いのツボは人によって異なるのでどうか。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『セブン・サイコパス』予告編