『メッセージ』 (2016) ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

話題の期待作『メッセージ』(原題『Arrival』)。公開1週目ということもあり、カナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴということもあり、久々に超満員の劇場で観た。そして観終わった後に、次回を待つ人が長蛇の列をなしているという状況をかつて見たことがなかった(まじめな日本人と違って、カナダ人は開始間際に劇場入りするのが普通)。

 

一番好きな映画は何かと聞かれれば、リドリー・スコット監督『ブレードランナー』を挙げるだろう。その『ブレードランナー』の続編の公開が来年予定されている。そのメガホンを取るのが『灼熱の魂』 『プリズナーズ』 『複製された男』 『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーヴとあれば期待するなという方が無理だろう。

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴの作品のよさは、観客に考える余地を与えることである。全てを説明するのではなく、文章であれば行間を読ませるような作品。『ブレードランナー』は、リドリー・スコットの作品の中でもそのような「空気」があった。その続編をドゥニ・ヴィルヌーヴが監督するというのは、適役以外の何物でもないように思える。

 

ある日突然、地球上の12ヵ所に異星文明のものと思われる巨大な物体が忽然と現れ、世界中がパニックに陥る。ルイス・バンクス(エイミー・アダムス)は言語学のエキスパートであり、エイリアンとのコミュニケーションのため軍に協力を要請される。エイリアンの音声解読に困窮するルイスが筆談を試みると、エイリアンは独特の模様を描いた。それは彼らの文字であった。その文字の解析の結果、彼らが地球に来た目的は驚くものだった。

 

この映画のテーマの一つは「コミュニケーション」。言語学者のルイスが主人公というのが鍵。コミュニケーション不全が分断をもたらす現代世界においても「言語は武器になる」ということをテーマを読み取るヒントとして出しておこう。

 

そして、もう一つのテーマは「家族愛(特に親の子供に対して)」。劇中何度もフラッシュバックのようにルイスと彼女の娘との交流のシーンが挟まれる。それは実は「未来の希望」であるというヒントも出しておこう。

 

いずれにしても、単なる異星生物とのクロース・エンカウンター物では収まらない、実に味わい深い作品になっていて、期待を全く裏切らなかった。逆に言えば、純粋なSF物としては「SFらしいエンターテイメント性」には欠けると言えなくもなく、同じスケール感を持ったSF物としては『プロメテウス』(これもリドリー・スコット監督)の方が好きな作品ではある。監督初のSF物がこれであれば、次回作の『ブレードランナー』続編への期待は高まるばかり。

 

上質のSF作品であり、もしSF物にアレルギーがなければ、観て全く損はないと思われる。

 

★★★★★ (5/10)

 

『メッセージ』予告編